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アプリの非正規ストア論争再燃 Apple・Microsoft二分

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞
アップルのクックCEOはアプリのサイドロードが消費者を危険にさらすと警告する=ロイター

【シリコンバレー=白石武志】スマートフォンやパソコンの基本ソフト(OS)上で「サイドロード」と呼ぶ正規ストア以外のアプリ配信を認めるかどうかをめぐり、米IT(情報技術)大手の対応が割れている。セキュリティーを理由に断固拒否するアップルと対照的に、オープン化にカジを切るマイクロソフトは歓迎姿勢を示す。アプリ流通の寡占に目を光らせる各国・地域の立法府などの動きも重なり、大きな論争となりつつある。

EU規制案に警戒あらわ

「iPhoneにサイドロードを強制すれば、セキュリティーやプライバシーを破壊することになる」――。アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は6月にフランスで開かれたイベントの公開インタビューで、欧州連合(EU)の欧州委員会が2020年12月に打ち出したIT大手に対する包括規制案への警戒感をあらわにした。

同規制案を構成するデジタルマーケット法(DMA)の文言は、アップルのスマートフォン「iPhone」上で正規ストア以外のアプリ配信を要求する内容だと解釈できる。クック氏はサイドロードを容認している米グーグルのOS「アンドロイド」を搭載した端末の場合、「マルウエア」と呼ぶ悪意のあるプログラムに感染する事例がアップルの「iOS」の数十倍に上ることも指摘し、規制案の負の側面を強調した。

アップルは自社の「アップストア」で配信するすべてのアプリを事前に審査し、セキュリティーやプライバシーなどの面でリスクがあると判断したものについては配信を拒んでいる。こうした取り組みがマルウエアの流通を防ぎ、20年の1年間で15億ドル(約1650億円)超の不正取引から消費者を守ることができたとしている。

アップルはiPhoneやタブレット端末「iPad」について、アップストア以外でのアプリ配信を認めておらず、有料アプリには15~30%の配信手数料を課している。人気ゲーム「フォートナイト」の開発元である米エピックゲームズはこうした手法が「反競争的だ」として、20年8月にアプリ配信の外部開放などを求める訴えを起こした。

アップルがサイドロードを認めている例外はパソコン「Mac」だが、同社のクレイグ・フェデリギ上級副社長はエピックゲームズとの裁判でMacに存在するマルウエアの水準は「アップルが許容できるものではない」と証言した。同社が自社製品の欠点を認めるのは異例で、それほどサイドロードには過敏だ。

Microsoft、遠回しにApple批判

マイクロソフトのナデラCEOはウィンドウズ上のサイドロードを積極的に推進している

アップルと正反対の動きを見せるのがマイクロソフトだ。同社のパソコン向けOS「ウィンドウズ」は以前からサイドロードを認めてきたが、6月に発表した最新版「ウィンドウズ11」では米アマゾン・ドット・コムと組み、アンドロイド向けアプリもウィンドウズ上で配信できるようにする計画を明らかにした。

サティア・ナデラCEOはオンラインで開いた発表会で「世界はよりオープンなプラットフォームを必要としている」と強調した。「OSとデバイスはユーザーのニーズに合わせるべきであり、その逆ではない」とも述べ、OSとアプリ、端末などの垂直統合を目指すアップルを遠回しに批判した。

OS上のアプリ流通のあり方をめぐっては、米IT大手への規制を強める欧州だけでなく、米国の独禁当局も関心を寄せはじめている。ユタ州など37州・地域の司法長官は7月、グーグルがアンドロイド上で端末メーカーや携帯電話会社によるアプリストアの開設を不当に阻んだなどとして、反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで同社に対する訴えを起こした。

2000年前後にウィンドウズとネット閲覧ソフトの抱き合わせ販売をめぐって米司法省と10年越しの独禁訴訟を繰り広げたマイクロソフトは、ウィンドウズ上のアプリ流通を積極的に外部に開放することで独禁当局との対決を避ける狙いもあるようだ。

ビジネスモデル変革も

ナデラ氏は6月のウィンドウズ11の発表にあわせ、自社の「マイクロソフトストア」などにおけるアプリ配信手数料を場合によっては無料とする方針も示し、15~30%の課金を続けるアップルやグーグルとの違いを鮮明にした。

サイドロードの是非をめぐっては、IT業界で過去にも繰り返し議論となってきた。米通信大手AT&Tは自社が販売するアンドロイド端末について、マルウエアを制限するとの理由でサイドロードのためのアプリを無効にしていたが、独自のアプリストアを運営するアマゾンなどの批判を受け、11年に無効措置を解除している。

米議会下院の超党派の議員が6月に公表した反トラスト法改正案はアプリストアや電子商取引(EC)などのプラットフォームを運営するIT大手への規制を強化する内容で、米メディアは法案が成立すればアップルはサイドロードを認めざるを得ないかもしれないと報じた。欧州発の規制案が世界に広がれば、米IT大手はビジネスモデルの変革を迫られる可能性がある。

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