Microsoft「ホロレンズの父」退職へ ARをけん引

【シリコンバレー=佐藤浩実】米マイクロソフトで拡張現実(AR)事業をけん引してきたテクニカルフェローのアレックス・キップマン氏が退職することがわかった。広報担当者が8日に認めた。AR端末「ホロレンズ」の生みの親として知られるキップマン氏の離職は、IT(情報技術)各社が注力する同分野の競争に影響を及ぼしそうだ。
キップマン氏は今後2カ月の引き継ぎ期間を経て、マイクロソフトを離れる。ホロレンズの事業は他のハードウエアや基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」と合わせて管理する組織体制に改める。広報担当者は日本経済新聞の取材に対し「メタバースに関わる事業の連携を強めるため」と説明した。
2001年からマイクロソフトで働くキップマン氏は、ゲーム機「Xbox」を音声やジェスチャーで操作する「キネクト」の開発で頭角を現した。その後、サングラス型のホロレンズの開発をけん引。16年に初代機を発売して以降、世界各地の顧客やアプリケーションソフトの開発者コミュニティーと関係を築いてきた。
日本好きとしても知られ、日本のARや仮想現実(VR)の開発者らとの交流も多かった。映像が不要な時に目もとをはねあげる機構を備えた現行機を発売した際は「日本の地下鉄で初代ホロレンズを首に掛けている人を見かけてひらめいた」と話していた。
退職の理由について、広報は「他の興味を追求するため」とだけ説明した。キップマン氏をめぐっては5月、米メディアのインサイダーが職場でのセクハラ問題を報じていた。セクハラに対する指摘が離職に影響を及ぼしたかどうかは、回答を得られなかった。