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米新興EV勢、計画に甘さ ローズタウン「継続に疑義」

ローズタウンが開発中のEVの前に立つトランプ前米大統領(20年9月)=ロイター

【ニューヨーク=中山修志、シリコンバレー=白石武志】電気自動車(EV)の米新興メーカー、ローズタウン・モーターズが8日、「継続企業の前提」に疑義が生じたと米証券取引委員会(SEC)に届け出た。受注件数の水増し疑惑などで資金繰りが悪化した。新興メーカーの事業計画の甘さが露呈し、EVブームに乗った投資家はリスクを抱えている。

ローズタウンはSECへの提出書類で3月末で約5億8700万ドル(約640億円)となった現金及び現金同等物について「EVの生産・販売開始のための資金として十分ではない」と説明し、「継続企業としての能力に大きな疑問が生じている」と記載した。

同社は5月24日発表の2021年1~3月期決算で1億2500万ドル(約136億円)の最終赤字を計上し、資金不足から21年のEV生産台数の見通しを下方修正していた。20年10月に特別買収目的会社(SPAC)との合併で上場した同社の株価は8日、21年2月に付けた最高値から6割超安い11ドル22セントまで下げた。

ローズタウンはGMが19年に閉鎖したオハイオ州の完成車工場の一部を買い取り、21年9月からEVトラックを生産する計画だった。ローズタウンが20年6月に開いた新車発表会にはペンス米副大統領(当時)が駆けつけるなど、米製造業の復活を掲げたトランプ前米政権も評価していた。

今年1月時点で予約台数が10万台を超えたとしていたが、米投資会社のヒンデンブルグ・リサーチが「ほとんどは架空のものだ」と疑義を唱えたことで株価が下落。5月の決算説明会でスティーブ・バーンズ最高経営責任者(CEO)は「21年内に2200台を生産するが、追加の資金が得られなければ約1000台になる」と述べていた。

20年には同じくSPACとの合併で上場した米電動トラックメーカーのニコラが電動化技術に関する虚偽の説明で投資家を欺いた疑惑が浮上。創業者が退任し、GMがニコラとの資本提携を撤回する事態に発展した。

米国の一般的な新規株式公開(IPO)では業績見通しを開示することは禁じられているが、SPAC上場では将来の具体的な数値目標を示すことが容認されている。こうした緩いルールが、SPAC上場銘柄が将来の事業計画を過大に主張する要因になっているとの指摘もある。

工場を居抜きで譲り、現物出資などを含めてローズタウンに計7500万ドルを出資したGMは、ニコラとほぼ同じ構図のスキャンダルに巻き込まれた格好だ。GMの広報担当者はローズタウンの事業に関与していないとして、8日付の開示についてコメントを避けた。

EV市場の先駆者である米テスラが創業した03年の段階では市場にEVはほぼ存在せず、初の量産車である「モデルS」を発売した12年時点でも大手のEVは日産自動車の「リーフ」などごくわずかだった。テスラは大手の間隙をついて生産開始から10年足らずで米国のEVシェア8割という地位を築いた。

ローズタウンが生産開始から3年後の24年に最大10万7000台のEVを生産する計画を示すなど、SPACによって上場した新興EV勢の多くは事業計画にテスラを上回るペースの成長戦略を盛り込んだ。車大手のEV参入はまだ先であり、しばらくは先行者利益を得られるとの読みもあった。

流れを一変させたのが今年1月のバイデン米政権の発足だ。車の電動化による新たな雇用の創出を掲げた同政権に呼応し、GMはEV工場への投資や車載電池工場の建設計画を矢継ぎ早に発表。後発とみられていた米フォード・モーターも25年までにEV関連に300億ドルを投資することを決め、5月に主力ピックアップトラック「F-150」のEV化を発表した。

GMのメアリー・バーラCEOは3日に開いた投資家向けイベントで「結局のところ、EVは電池技術と量産化の競争だ」と述べ、「GMは非常に有利な立場にいる」と強調した。英バークレイズは自動車業界を襲う半導体不足についても「GMは業界の混乱をうまく乗り切っている」と評価する。

大手メーカーがEVシフトのアクセルを踏み込む一方、SPAC上場組の株価はさえない。ニコラや昨年末に上場した米カヌーの足元の株価は軒並み上場時を下回る。成長戦略に疑問符がつけば生産開始に必要な資金調達が難航し、スタートラインに着く前に脱落しかねない。第2のテスラを狙ったEV投資ブームが一気に冷める可能性が出てきた。

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