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大規模システム障害、世界数千件に影響 1500億円損失も

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ファストリーは各国の企業や政府機関のウェブサイトでコンテンツの素早い配信を支援してきた

【ニューヨーク=白岩ひおな】8日に起きた米fastly(ファストリー)による世界的な大規模システム障害で、ウェブサイトの閲覧不能や取引の一時停止に見舞われた企業や政府機関のサイトは数千件に上った。アマゾンやイーベイなど電子商取引(EC)企業のサイトも含まれ、世界の小売業に与えた損失は約1500億円超に上るとの試算もある。ウェブコンテンツを素早く配信できる利便性の裏で、サービスを提供する一部の企業に世界の商取引やシステムが依存する危うさも浮き彫りにした。

日本経済新聞社や米ニューヨーク・タイムズを含む多くのメディアが一時閲覧できなくなった。フリマアプリ「メルカリ」や音楽配信大手のSpotify、動画配信のHulu(フールー)にも影響が及んだ。米オンライン決済大手ペイパル・ホールディングスのサイトでは決済サービスを一時利用できず、英国の政府機関のサイトでは納税者による書類提出や新型コロナウイルス関連のシステムが一時使えなくなった。多くのサイトは8日深夜時点で復旧済みだ。

ファストリーのシニア・バイスプレジデント、ニック・ロックウェル氏は公式ホームページへの投稿で「障害は広範囲かつ深刻なもので、顧客とサービスを利用する皆様に影響を与えたことを心よりおわびする」と謝罪した。

ロックウェル氏は障害について、5月12日に導入したソフトウエアに含まれていた潜在的なバグに起因したものだと明らかにした。ある状況下で顧客が特定の設定変更を行うと障害が起こるようになっており、6月8日に顧客が条件に該当する設定変更を行ったために世界的な障害につながったと結論づけた。

障害発生を知らせるfastlyのホームページ

復旧までの時間は各ウェブサイトごとに幅があるが、ファストリ―は1分以内に障害を検知し、原因を特定して設定を無効にしたと説明した。障害発生から49分後には、ネットワークの95%が通常通り稼働するようになったとした。バグの修正プログラムを早期に講じるほか、ソフトウエアのテスト段階でバグを検出できなかった背景などをめぐる事後検証を行う。復旧にかかる時間の短縮も検討する。

メディア分析の英Kantarは、今回の障害では1時間で2900万ドル(約32億円)以上の世界のデジタル広告収入が失われたと試算する。英パーセル・ヒーローの消費者調査部門の責任者、デビッド・ジンクス氏は、米欧など世界の小売業に与えた損害額は10億ポンド(約1550億円)に上るとみる。

ファストリーの広報担当者は日本経済新聞の取材に、把握している損害額や損失への対応について回答を控えた。ただ、米メディアはファストリーの規約の内容として、同社が顧客と事前に合意した性能基準や保証を含むサービスレベル契約を踏まえ、ウェブサイトが利用できなかった時間に応じて返金などを行う場合があると報じている。

2011年創業のファストリーは欧米を中心に世界各地に配置した高速サーバーを通じたコンテンツ・デリバリー・ネットワーク(CDN、コンテンツ配信網)サービスを提供している。原本となるサイトの内容を複数のサーバーにコピーして配信し、アクセスを分散させる。ウェブサイトの読み込み時間を短縮し、動画など容量の大きいデータも通信量を抑えて素早く送れる利点がある。

同社のサイトはニューヨーク・タイムズが選挙時に200万人の読者からのアクセスを同時に処理できるようにしたり、米新興ネットメディアのバズフィードでページの読み込み時間を50%高速化したりした事例を紹介している。高い利便性で利用が広がる一方、CCSインサイトのチーフアナリスト、ベン・ウッド氏は今回の障害が「一部の技術に過度に依存するインターネットの脆弱性を示した」と指摘する。

今回のケースでファストリーは「システムの設定」を障害の理由とし、サイバー攻撃などは否定した。同様のサービスを手がける米アカマイ・テクノロジーズのシニア・バイスプレジデント、アンディ・シャンパン氏は類似の障害が起こりうる場面として情報保護ルールの更新やサーバーへのコンテンツ更新の指示などを挙げる。「単純なタイプミス一つでも何千台のサーバーに広がり、混乱を招く可能性がある」という。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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