/

米SEC、個人取引「無料」の仕組みにメス 改革案作成へ

(更新)

【ニューヨーク=宮本岳則】米証券取引委員会(SEC)のゲンスラー委員長は8日、株式市場の改革案を作成すると明かした。個人投資家が手数料ゼロで株式を売買できる仕組みについては、超高速取引業者(HFT)の競争を促し、取引の透明性を高めたい考えだ。業界関係者からは早くも反対意見や慎重論が出ており、新ルールがすんなり導入されるかは見通せない。

同日、米投資銀行パイパー・サンドラーのイベントに出演し、株式市場改革の考え方について説明した。繰り返し強調したのは透明性と競争の重要性だ。ゲンスラー氏は「市場のさまざまな部分で公平な競争は行われていないし、市場はますます見えにくくなっている」と話した。

不透明な慣行の一つとして例示したのが、リテール証券の売買無料化を支える制度だ。米ネット証券チャールズ・シュワブやスマホ証券ロビンフッド・マーケッツなどは、マーケットメーカー(値付け業者)に個人投資家の売買注文を回送し、見返りにリベートを受け取っている。「ペイメント・フォー・オーダーフロー(PFOF)」と呼ばれる仕組みで、無料化の原資となってきた。

売買無料化が定着した結果、個人の売買注文の9割はマーケットメーカー役のHFTに回送されるようになった。個人の注文はニューヨーク証券取引所やナスダックで執行されず、HFTが店内で処理するため、取引所外取引の比率が高まった。「ゲームストップ株騒動」に代表される個人の投機的な売買が過熱した2021年当時、最大で47%に達したという。

ゲンスラー氏は、大手HFTのシェアが高まり、競争原理が働きにくくなっているとの見方を示したほか、「(取引所で)注文ごとの競争にさらされるほどには、個人に利益をもたらさないかもしれない」と述べた。21年の講演では、ロビンフッドがHFTから多くのリベートを受け取る見返りに、顧客の価格改善効果を犠牲にしていたと話していた。こうしたコストは個人にとって「手数料ゼロで節約できる額を超えていた可能性がある」という。

同氏は8日、「オークション」制度の導入を検討するようSECのスタッフに指示したと明かした。上場オプション市場ですでに採用されている制度で、HFTは回送された個人の注文を取引所に取り次ぎ、1秒未満の短い時間で気配を提示しなければならない。機関投資家の注文を取り次ぐ証券会社が、オークションで個人の注文と突き合わせることも可能だ。

同制度が現物株でも実現すれば、HFTは店内で執行できなくなり、取引所外取引の割合は低下するとみられる。早ければ秋にも正式に新ルールが提案される見通しだが、実際の導入は1年以上かかるとみられている。取引無料化は個人投資家の裾野をひろげ、株式市場の活性化につながった。ルール変更への影響は未知数だが、業界関係者からは早くも反発や戸惑いの声があがっている。

ゲンスラー氏の講演後、同じイベントに登壇したHFT大手のバーチュ・ファイナンシャルのダグラス・シフ最高経営責任者(CEO)は「データに基づいて議論すべきだ」と反発した。同社の取引データに基づくと、価格改善効果の形で個人に恩恵をもたらしているという。同業大手のシタデル・セキュリティーズは声明で「個人投資家や市場全体にとってコスト削減とより良い執行につながるよう支援する」と述べた。

スマホ証券のロビンフッドは取引無料化で投資初心者を取り込んできた。収入の多くをHFTからのリベートに依存しており、PFOF見直しの影響は大きいとみられる。ダン・ギャラガー最高法務責任者は「個人投資家にとって本当に良い環境であり、今すぐ台無しにするのは少し心配だ」と表明した。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン