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仮想通貨大手バイナンス、同業FTXの事業買収で合意

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【ニューヨーク=大島有美子】暗号資産(仮想通貨)交換業最大手のバイナンスは8日、同業大手のFTXトレーディングの米国以外の事業を買収することで合意したと発表した。顧客の資金引き出し急増に伴ってFTXに資金繰りの問題が発生し、バイナンスが救済買収という形をとる。実現すれば仮想通貨交換業で最大級のM&A(合併・買収)となる。今回の混乱や買収が今後の規制に影響を与える可能性もある。

バイナンスのチャンポン・ジャオ最高経営責任者(CEO)とFTXのサム・バンクマン・フリードCEOがともにツイッター上で明らかにした。買収額は明らかにしていない。現状の合意に拘束力はなく、ジャオ氏は「いつでも取引から撤退できる」と述べた。今後数日内に資産査定を実施した上で詳細を詰める。

両氏によると、FTXの流動性が逼迫し、バイナンスに支援を求めた。バンクマン・フリード氏は資金繰りの問題は解消できるとした上で「顧客は保護されている」と強調した。その上で「決済などにしばらく時間がかかるかもしれない」と述べた。取引に携わる関係者によると、8日朝までの72時間で顧客はFTXから60億ドル(約8700億円)の資金を引き出した。

バイナンスの主要な拠点はパリとドバイで、登記上の本社はケイマン諸島だ。FTXは中米バハマに本社を置く。両社は世界でサービスを展開しているが、今回の買収ではFTXの米国事業「FTX・ドット・US」は対象外になる。米国でのFTXの交換業は通常通り運営するという。

傘下の投資会社で財務に懸念

今回の流動性問題は、バンクマン・フリード氏が保有する投資会社アラメダ・リサーチの財務懸念に端を発する。アラメダの保有する資産約150億ドルのうち、約4割をFTXが発行するトークン(電子証票)「FTT」が占めることが内部文書で明らかとなった。負債の一部もFTTで構成されていた。

バイナンスのジャオ氏は流動性を考慮し、バイナンスが保有していたFTTを売却する方針を6日にツイッターで示した。売却額は数百億円に上るとみられ、FTTの価格は急落。ジャオ氏の方針にFTXのバンクマン・フリード氏は反発していた。

FTTの価格急落により、アラメダと関係の深いFTXの財務不安に波及した。バンクマン・フリード氏は7日、「FTXは大丈夫だ」と強調したが、FTXに資産を預ける投資家や仮想通貨企業が急ピッチで換金し始めた。仮想通貨専門メディア「ザ・ブロック」は8日朝、FTXが出金停止措置を講じたと報じた。その数時間後、バイナンスがFTXの事業を買収する方針を示す展開となった。

関連銘柄急落、コインベースは11%安

仮想通貨相場は乱高下している。代表的なビットコインの価格は7日まで2万ドル台で推移していたが、FTXの財務不安を受けて8日朝にかけ1万9000ドル台に下落。買収方針の発表を受けて2万ドル台に戻したが、買収合意は暫定的であることが意識され、その後は一時1万7000ドル台に下げる場面もあった。

FTXの財務不安で関連銘柄は8日、大きく売られた。バンクマン・フリード氏が大株主のスマートフォン証券、ロビンフッド・マーケッツの株価は前日比で19%安と急落し、大手仮想通貨交換業で唯一上場している米コインベース・グローバルは11%下げた。市場では「FTXの資金繰り懸念は業界全体に不安の波をよび、さらなる売り圧力がかかるだろう」(米オアンダのエドワード・モヤ氏)との声が上がる。

バイナンスは手数料の低さを売りに、仮想通貨の取引量で他社を圧倒する。英クリプトコンペアによると、バイナンスが仮想通貨交換業の上位15社の取引料に占める割合は21年1月~22年5月までで5割を占めた。FTXはトップ5に食い込む大手で、買収が実現すれば仮想通貨業界の勢力図が大きく変化する。

ソフトバンクグループも出資するFTXは22年に入って存在感を高めた。相場急落で市場が混乱するなか、「デジタル資産のエコシステムを守る」(バンクマン・フリード氏)として経営難の仮想通貨関連企業に資金を提供してきた。6月には仮想通貨の貸し付けを手掛けるブロックファイに融資枠を設け、7月に破綻した融資サービス、ボイジャー・デジタルの資産も買収した。

中間選挙の候補者にも大口献金

バンクマン・フリード氏は8日投開票の中間選挙で仮想通貨に理解があるとされる候補者に大口の政治献金をするなど、政界への影響力を強めている。政治資金の動きを調べる「オープンシークレッツ」によると、直近の献金額で同氏は著名投資家ジョージ・ソロス氏や米ヘッジファンド大手シタデル創業者ケン・グリフィン氏などに次ぐ6位につけた。

米連邦議会では投資家保護のため仮想通貨取引への規制を強める法案の検討が進む。FTXはこれまで業界の救済者に位置づけられたが、今回の混乱やバイナンスによる買収劇が仮想通貨関連の規制に影響を与える可能性もある。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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