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米住宅ローン申請、22年ぶり低水準 金利上昇で需要減

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【ニューヨーク=斉藤雄太】米国の住宅ローン需要が細っている。米抵当銀行協会(MBA)が8日発表した週次調査によると、3日までの週の申請規模を示す総合指数(季節調整済み)は前の週から6.5%下がり、22年ぶりの低水準になった。米連邦準備理事会(FRB)による急ピッチの利上げ方針を反映して住宅ローン金利も大幅に上がり、借り換えと新規購入の両方で資金需要が落ち込んでいる。

米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)によると、昨年末に3.1%だった30年固定の住宅ローン金利(週平均)は5月半ばに5.3%まで急上昇し、約13年ぶりの高水準になった。足元でも5%台で高止まりする。昨年までの低金利環境では利払い負担を減らすため、過去に組んだ住宅ローンを借り換える動きが活発だったが、金利上昇でこうした動きは止まった。

新たに住宅を購入するためのローン需要も鈍っている。米連邦住宅金融庁(FHFA)の算出する全米の住宅価格指数は過去2年間で3割近く上昇した。金利上昇と相まって物件の値ごろ感は失われている。MBAで経済・産業予測を担当するジョエル・カン氏は「特に初めて住宅を買おうとしている人には厳しい状況だ」と指摘する。

米住宅市場では既に販売も減速し始めており、4月は中古住宅が3カ月連続減、新築戸建てが4カ月連続で減った。人手や資材などの不足で市場に出回る物件が少ないこともあり、住宅価格は上昇基調を保ってきた。だが「住宅ローン需要の急減は販売の急な落ち込みを示唆し、価格も容易に下落しうる」(調査会社のパンテオン・マクロエコノミクス)との声も出始めている。

FRBは2020年春に新型コロナウイルス対応で始めたゼロ金利政策を3月に解除し、5月には従来の2倍となる0.5%の利上げに踏み切った。6月と7月の会合でも0.5%の利上げに動く構えで、国債などの保有資産の削減を進める量的引き締めも今月から始めた。金融緩和から引き締めへの政策転換を急ぎ、経済全体の過剰な需要を抑えて高インフレを抑え込む狙いがある。

住宅価格や家賃の高騰は中長期的な物価高につながりかねず、FRB幹部は住宅市場の過熱に警戒感を示してきた。金利上昇で需要が冷え込む動きが出てきたことは政策効果の表れといえる。ただ、住宅投資や関連する家具・家電などの購入を含めて家計の支出が過度に落ち込めば、景気後退のリスクも高まる。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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