SEC、米コインベースに警告 仮想通貨融資巡り提訴も

【ニューヨーク=吉田圭織】米暗号資産(仮想通貨)交換業大手のコインベース・グローバルは7日、導入を予定していた仮想通貨の貸し出しサービスを巡って米証券取引委員会(SEC)から提訴も辞さないとの警告を受けたと発表した。SECは仮想通貨関連の規制強化を表明している。コインベースはSECの対応が漠然としていると批判した。
コインベースのブライアン・アームストロング最高経営責任者(CEO)がツイッターで明らかにした。同社のブログでもSECの対応に疑義を呈する異例の文書を掲載した。
SECが問題視しているのはコインベースが数週間後に導入を予定していた仮想通貨の融資サービス。顧客が同社を通じて、価格が米ドルに連動したステーブルコイン「USDコイン(USDC)」を別の顧客に貸し出し、年4%の利回りを得られる仕組みだ。SECはこうした商品が有価証券に該当すると認識しており、コインベースが認可を取得しないまま取り扱いを始めれば提訴すると1日に伝えたという。
これに対し、コインベースはブログで「SECは理由も提示せずに提訴すると警告した」と指摘。他社も同様の商品を扱っており、基準が曖昧だと反論した。その上で、サービスの導入を少なくとも10月まで先送りすると発表した。SECは8日時点で、コインベースとのやり取りや方針について公表していない。
コインベースは今年4月に上場した。仮想通貨の取引急増で、2021年4~6月期決算は売上高に相当する純営業収入が前年同期の11倍強の20億3300万ドル(約2250億円)になった。ブログなどの公表を受けて8日の株価は前日比で一時4.8%下落した。
SECのゲンスラー委員長は仮想通貨関連の規制強化の必要性をたびたび主張している。米調査会社のカウエンは8日付のリポートで、SECによる警告はコインベースに限られないと分析。仮想通貨の融資サービスを提供する他の交換業者にも規制は及ぶとの見方を示した。
仮想通貨と株式など有価証券との線引きを巡る議論は続いている。SECはクレイトン前委員長時代の20年12月、米リップル社が取り扱う仮想通貨「XRP」を有価証券とみなし、投資家保護に違反したとして提訴した。