北朝鮮の核実験準備が「最終段階」 安保理パネル

【ニューヨーク=白岩ひおな、吉田圭織】国連安全保障理事会は8日までに、対北朝鮮制裁の履行状況を調べる専門家パネルの中間報告書を公表した。豊渓里(プンゲリ)核実験場での地下トンネルの掘削再開や核実験に使われる爆発装置の実験が確認されたと明記。6月時点で7回目の核実験準備が「最終段階に入った」とする加盟国2カ国の分析を盛り込んだ。
北朝鮮が5年ぶりに日本上空を通過する弾道ミサイルを発射するなど挑発行為を続ける一方、制裁逃れを続ける現状や手口を詳述している。報告書に法的拘束力はないが、報告を受けて安保理や加盟国などが違反する団体や個人に新たな制裁を科すことがある。報告書は2022年1月から7月の対北朝鮮制裁の履行状況をまとめている。
報告書によると、北朝鮮は寧辺(ニョンビョン)の核施設で核分裂性物質の生産能力を高めた。18年に非核化交渉の過程で爆破した豊渓里の核実験場の地下トンネルの掘削も再開した。核実験に使われる爆発装置の実験が確認されたと明らかにした上で「追加の核兵器開発に向けた核実験に道を開くものだ」と指摘した。

北朝鮮による石油精製品の輸入などの制裁逃れも続いた。報告書は、北朝鮮が貨物船を加工し、船体を安定させる「バラスト水」の代わりに石油を入れて密輸している可能性を指摘した。貨物船の船倉やバラスト水を入れる船底にコンクリートを敷き、石油を積んでいるという。
新型コロナウイルス対策の国境封鎖の影響もあり、7月27日までに加盟国が安保理の制裁委員会に報告した北朝鮮による石油精製品の輸入量は年間供給上限50万バレルの8.15%にとどまった。ただ、ある加盟国は上限に迫る45万バレル超が輸入されたと推計する。北朝鮮に寄港する石油タンカーは例年に比べて少ないが、タンカー以外の方法での「石油の調達能力の拡大」を考慮すべきだと警鐘を鳴らした。
海上で積み荷を移し替える「瀬取り」も続いている。北朝鮮による中国領海での石炭の荷降ろしなども確認された。報告書は各国に北朝鮮船舶の検査強化を求めた。
北朝鮮は防衛企業を含む47の企業・機関にサイバー攻撃を実行した。北朝鮮系のハッカー集団「ラザルスグループ」などがサイバー攻撃を通じてイーサリアムやUSDコイン(USDC)など数億ドル相当の暗号資産(仮想通貨)を盗み取った。核・ミサイル開発の資金源にあてているとみられる。日米韓3カ国の北朝鮮担当高官は7日の電話協議で、不法な資金調達を阻止する方針で一致した。
報告書は北朝鮮がNFT(非代替性トークン)を資金調達とマネーロンダリング(資金洗浄)の手口として使う例が増えていると説明した。3月にはラザルスが、フィリピンなどで人気のNFTゲーム「アクシー・インフィニティ」の関連サービスから仮想通貨を盗んだとされる。
報告書には、北朝鮮における新型コロナの感染拡大をめぐり「国連による制裁が意図せずして人道状況に影響を及ぼしたことに疑いの余地はない」との文言も盛り込まれた。安保理で制裁緩和を繰り返し求めている中国やロシアに配慮したとみられる。

金正恩(キム・ジョンウン)総書記のもと、ミサイル発射や核開発などをすすめる北朝鮮。日本・アメリカ・韓国との対立など北朝鮮問題に関する最新のニュースをお届けします。