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米・イラン、核合意巡り応酬 米復帰へハードル高く

バイデン米大統領の政権はイラン核合意への復帰を目指す考えを表明済みだ=ロイター

【ワシントン=中村亮、ドバイ=岐部秀光】バイデン米大統領とイラン最高指導者のハメネイ師が、イラン核合意をめぐり応酬を繰り広げている。バイデン氏が模索する核合意復帰への手順で大きな隔たりがあるからだ。米国内では核合意への復帰に反対論も根強く「長期戦」を前提に、対イラン政策の立案を急ぐ構えだ。

バイデン氏は2015年に米英独仏中ロとイランが結んだ核合意への復帰の条件として、イランがまず核合意の義務を再履行すべきだと主張。米国がイランの再履行に先立って対イラン経済制裁を解除する案を否定した。米CBSテレビが7日、事前収録したインタビューの一部を公開した。核合意はイランの核開発を制限する内容だ。

一方、ハメネイ師は7日の演説で「米国が核合意に復帰するための条件を示すのは、米国ではなくイランのほうだ。米国が先に制裁を完全に解除しなければならないという条件は譲れない」と強調した。

両首脳が核合意をめぐり従来の主張を譲らない姿勢を示し、米国の核合意復帰に向けたハードルが高い事実が浮き彫りになった。

イランのザリフ外相は7日、21日までに制裁が解除されなければ、国際原子力機関(IAEA)との追加議定書にもとづく抜き打ち査察を拒否すると警告した。6月に大統領選を控えるイラン指導部は、対米で弱腰をみせたくない事情もある。

トランプ前政権は18年5月、核合意から一方的に離脱すると表明。その後、イランに対する経済制裁を再開した。新たにイラン産原油の輸出禁止措置を講じた。

イランは反発し、19年5月から段階的に核合意の義務履行を停止した。1月にはイランが濃縮度20%のウラン製造に着手し、核兵器に使用されることが多いウランの研究開発を始めたことが明らかになった。イランが核兵器保有に近づくにつれイスラエルやサウジアラビアが反発し、中東情勢が一段と不安定になりかねない。

バイデン政権は対イラン政策の立案を急いでいる。ブリンケン国務長官は5日、核合意参加国の英独仏の外相とテレビ会議を開き、イラン政策を擦り合わせた。バイデン氏は1月下旬、オバマ政権下でイランとの核交渉に深く関わったロバート・マレー氏をイラン担当特使に起用した。サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)に加え、国務副長官に指名したウェンディ・シャーマン氏もイラン核合意に精通している。

米イランの対立の解消に向けた「有力案の一つ」(欧州当局者)だと取り沙汰されるのが、米国が制裁を段階的に緩和する案だ。米制裁の一部緩和の見返りとして、イラン側が再履行する核合意の内容をまとめた工程表を作成。双方の疑心暗鬼を和らげながら、米国の核合意復帰とイランによる義務の完全履行を同時に実現する考え方だ。制裁を解除せず、トランプ氏が撤廃した制裁の適用除外を復活させる手もある。

トランプ前政権は対イラン制裁を一貫して強化してきた。新米国安全保障センターによると、米国は2020年に777個人・団体に制裁を科した。このうちイラン関連は336で、19年より6割増えた。トランプ前政権は、イランがウラン濃縮や弾道ミサイル開発の停止など12項目の要件に応じるまで経済制裁を強めると主張し、イランに譲歩を迫った。しかし、実際にはイランが核合意から逸脱し、中東の緊張がむしろ高まった。

米財務省で経済制裁を担当したブライアン・オトゥール氏は「バイデン政権がイランの要求を満たす制裁緩和に応じるハードルは高い」とみる。仮にイランが核合意を再履行した場合でも、米国が原則として制裁解除に応じるのはイランの核開発に関わる分野に限られる。トランプ前政権が周辺国の武装勢力支援や人権侵害への関与を理由に科したイラン制裁は残る可能性がある。

たとえば、トランプ前政権は19年9月、イラン最高指導者に直属する軍事組織、革命防衛隊のテロ活動を支援したとしてイラン中央銀行を制裁対象に指定した。イラン中銀が各国と自由に国際決済をできなくなれば同国が貿易を円滑に進めることは難しくなる。米国は核合意とは無関係にイランのエネルギーや金融分野に関与する革命防衛隊を「外国テロ組織」にも指定した。米国ではイランへの強硬論が根強く、とくに革命防衛隊のテロ指定解除には強い反発が予想される。

バイデン政権にとって、イランと対立するサウジアラビアやイスラエルとの関係構築も課題になる。バイデン政権はイエメン内戦に関連したサウジへの軍事支援を停止すると表明した。イランが支援するイエメンのイスラム教シーア派武装勢力「フーシ」に対する外国テロ組織の指定を解除する方針だ。イランを利する判断で、サウジやイスラエルが反発を強めるリスクがある。バイデン政権が核合意復帰に向けて本格的に動き出せば、サウジやイスラエルがイランを挑発し、米国との対立をあおって核合意交渉を妨害するとの指摘もある。

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