/

「ゴルディロックス」論、再び(NY特急便)

米州総局 後藤達也

ダイモン氏は米景気に楽観的な見通しを示した=ロイター

7日、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)が株主に年1回の手紙を送った。経営の課題など非常に長くつづられていたが、米メディアが大きく取り上げたのは「ゴルディロックスが訪れそうだ」という言葉だ。ウォール街で最も影響力のある経営者の発言は株式市場の心理も支えた。

ゴルディロックスは英国の童話に由来する言葉で、景気が過熱も停滞しない心地よい状態を指す。金利も低水準で安定し、マネーがリスク資産へ向かいやすい「適温相場」とも呼ばれる。

2021年1~3月の金融市場はゴルディロックスとは遠い状況だった。強力な経済対策と経済再開の進展期待で景気は一気に過熱に向かい、米連邦準備理事会(FRB)も金融緩和の修正を迫られるとの見方が急激に広がった。長期金利は急上昇し、ナスダックに上場する主力のIT(情報技術)株が大きく売られる場面もあった。

ところが先週には長期金利の上昇が一服し、今週に入ってからはむしろ低下傾向に転じている。特に動きが目立つのがFRBの今後の政策運営に左右されやすい5年物国債だ。5日には0.98%と1年2カ月ぶりとなる1%が目前に迫り、22年にも利上げが始まることを織り込んだが、7日には0.84%まで下がった。

今年1~3月は債券市場で売りが売りを呼ぶ展開となり、需給主導で金利が大きく上がった。ただ、民間エコノミストは景気見通しを上方修正させつつも、物価上昇率が持続的に2%を大きく上回る可能性は低いとの見方が優勢だ。3月の長期金利上昇が映す利上げの織り込みは「前のめりすぎる」(バークレイズ)との指摘が増えている。

7日午後、FRBは3月16~17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公表した。議論の土台となるスタッフ報告では長期金利上昇の主因は「景気見通しの改善」だと指摘。企業や家計の資金調達環境は「幅広い範囲で緩和的な状態が続いている」と評価した。社債や住宅ローンの金利は上がったとはいえ歴史的にはなお低水準だ。金利高騰が続かないのであれば景気に強烈な逆風とはならない。

FRBのブレイナード理事は7日、米CNBCに出演し、景気見通しは「非常に明るい」としつつも、現状は「完全雇用には程遠い」とも指摘。強力な金融緩和を続けていく構えを改めて強調した。

債券市場では「金利の動きが穏やかになってきたことで、いまの米国債の利回りに妙味を感じる海外投資家が増えつつある」(国債トレーダー)との声が出ている。2~3月は金利の水準よりも、上昇の速さに身構える株式投資家が多かったがその警戒は薄れている。

冒頭のダイモン氏の手紙では新型コロナウイルスの変異や予想外の早期利上げなどリスク要因も挙げた。それでも「景気回復を止めることにはならないだろう」と前向きな見方を示した。

7日の米株式市場ではS&P500種株価指数は小幅ながら上昇し、史上最高値を塗り替えた。株安懸念を映すVIXは一時16台とコロナ流行前の20年2月以来の水準に下がった。ゴルディロックスのムードは着々と醸成されている。(ニューヨーク=後藤達也)

春割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で申し込むログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で申し込むログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で申し込むログイン