米国で広がるTikTok規制、情報漏洩に懸念 州政府など

【ニューヨーク=弓真名】米国で中国発の動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」の利用を規制する動きが相次いでいる。6日には東部メリーランド州が州政府の機関でティックトックを含む中国のサービスや製品の一部使用を禁じたと発表した。中西部インディアナ州でも7日、州司法長官がデータの扱いをめぐり消費者を欺いているとして運営会社を提訴した。データ漏洩などの懸念があるためで、米中対立の余波が広がっている。
メリーランド州の新規制はラリー・ホーガン知事(共和党)が公表した。同州の行政機関に属する職員に対し、州政府のネットワーク上で中国の字節跳動(バイトダンス)の傘下企業が運営するティックトックやIT(情報技術)大手の華為技術(ファーウェイ)製品を使うことを禁じた。ロシアのサイバー対策大手、カスペルスキーのセキュリティー対策ソフトも含む。
ティックトックの利用禁止については、機密情報が中国側に流れるのを防ぐためとしている。同州の情報管理責任者であるチップ・スチュアート氏は「海外の組織によって引き起こされるサイバーセキュリティー上の脅威に向けた対策の第一歩になる」と声明を出した。
インディアナ州でも7日、トッド・ロキータ司法長官がティックトックの運営会社とバイトダンスを提訴した。米メディアが相次いで報じた。米消費者の情報に中国政府がアクセスできることなどを意図的に隠しており同州の消費者保護法に違反するとしている。
南部サウスカロライナ州も5日、州政府が管理するすべての電子機器でティックトックへのアクセスをブロックする措置を始めた。中西部サウスダコタ州は11月末、州政府関係者を対象に州が貸与する端末や機器でのティックトックの使用を禁じた。同州のクリスティ・ノーム知事(共和党)は「中国共産党はティックトックから集めたデータを使って、米国民に情報操作を仕掛けている」と不信感をあらわにした。
独調査会社のスタティスタによると、米国におけるティックトックの利用者(2021年時点)は若年層を中心に約8700万人にのぼり、22年にはさらに1割近い増加を見込む。
米政府や議会は膨大な利用者のデータや機密情報が中国政府に渡るリスクを警戒する。米連邦通信委員会(FCC)のブレンダン・カー委員は11月、米ニュースサイト「アクシオス」のインタビューに「(安全保障の観点から外国企業の対米投資を審査する)対米外国投資委員会(CFIUS)はティックトックを全面的に禁止する措置を取るべきだ」と述べた。