米司法次官補候補「独禁法を積極執行」 ITに第3の刺客

【ワシントン=鳳山太成】米司法次官補に指名されたジョナサン・カンター氏は6日、議会で証言し、巨大IT(情報技術)企業などに対して反トラスト法(独占禁止法)を積極的に執行する姿勢を示した。人事が承認されれば、バイデン政権の競争政策を率いる重要ポストに「反・巨大IT」の人物が就くのは3人目となる。
バイデン大統領が司法次官補(反トラスト局長)に指名した弁護士のカンター氏は上院の指名公聴会で「私はテック分野で積極的な反トラスト法の執行を強く支持してきた」と述べた。
具体的な企業を名指しするのは避けつつも「支配的な企業は様々な方法で国民を犠牲にして独占的な力を悪用できる」と指摘した。巨大IT企業などを念頭に、市場で高いシェアを持つ企業に厳しい視線を向けた。
これまでカンター氏は活動家の弁護士として、グーグルやアップルなど米巨大IT企業の反競争的な行為を訴える法廷闘争に長年参加してきた。マイクロソフトの顧問を務めた経験も長く、ITに精通する。
反トラスト法を担う司法次官補は、競争を妨げている企業を提訴するか決める大きな権限を持つ。トランプ前政権下で司法省は2020年10月、グーグルを同法違反の疑いで提訴した。アップルも調査中だ。カンター氏は重要な案件を引き継ぐ。
バイデン氏は大統領特別補佐官(競争政策担当)にティム・ウー氏、司法省と反トラスト法を共同で所管する米連邦取引委員会(FTC)の委員長にリナ・カーン氏をそれぞれ指名した。いずれも巨大ITへの規制強化を唱える強硬派だ。カンター氏が加われば巨大ITへの包囲網は一段と狭まる。
カンター氏が見据えるのは巨大ITに限らない。農業や医薬品、労働市場の分野でも反トラスト法を積極的に執行すると意欲をみせた。「反競争的な合併に確実に対処することが重要だ」とも語り、M&A(合併・買収)の審査にも厳しく臨む構えだ。
議会では現代に沿うように反トラスト法改正を求める声がある。一方、現行法の積極的な執行で対応できるというのがカンター氏の持論だ。00年代に入って大型の独禁法訴訟が途絶えるなか、企業の独占や寡占に寛容な独禁当局の姿勢を批判してきた。
与党・民主党では経済格差を是正する観点からも支配的な大企業を厳しく取り締まるべきだとの声が高まっている。もっともカンター氏は「反トラスト法を執行するときに政治的な影響を受けるべきではない」と独立性を強調した。
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