2050年の石油需要、世界で4割増 米当局見通し
【ヒューストン=花房良祐】米エネルギー情報局(EIA)は6日、2050年の石油需要が20年比で4割増加するとの長期見通しを公表した。アジアや新興国がけん引し、世界のエネルギー消費は5割増加する。再生可能エネルギーも急伸するものの、現状の政策が続けば化石燃料抜きでは需要を賄いきれない。二酸化炭素(CO2)の排出量も2割以上増加するとみており、脱炭素の難しさが浮き彫りになった。
EIAは現状の各国の政策の傾向と技術開発のペースが続くとの前提で見通しを算出した。客観的なデータを提供するために米政策当局からの独立性を保ちながら政策提言には踏み込まず、マクロ的な分析に特化しているのが特徴だ。
CO2の排出量は50年まで増え続け、現状の政策のままではカーボンゼロからはほど遠い姿となる。1次エネルギーに占める割合は、再生エネが20年の15%から50年に27%まで拡大する。石油は同じ期間で30%から28%に下がるが、需要全体が伸びるため、需要量も増える。天然ガスと石炭も同様な傾向だ。
先進国はカーボンゼロに向けて発電の脱炭素化や電気自動車(EV)の導入支援を強化している。一方、こうした政策はコスト増加につながりやすいため、人口増加と経済成長が続くアジアや新興国の多くで導入が遅れている。

石油需要で大きな割合を占めるのが交通部門だ。EIAの見通しによると、ガソリン車の保有台数はEVの増加により先進国では23年に頭打ちとなる。一方、新興国ではガソリン車の需要が根強く、世界全体ではピークが38年にずれ込む。製造工程で蒸気を発生させるために化石燃料を使う工業部門の燃料転換も遅れる。
石油消費は中国では30年代半ばに頭打ちになるが、インドはこのままだと右肩上がりで増加し、50年には20年の3倍以上となるという。この結果、世界の原油生産は増え続ける。
発電部門では新興国の電力需要が50年までに6割増え、再生エネの発電量も急伸する。ただ、電力システムを安定させるために天然ガスと石炭も引き続き重要な役割を果たすとしている。

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