/

インテル、「データの黒子」死守へ 自社ブランド構わず

(更新)
データセンター向けの新しいCPU

【シリコンバレー=佐藤浩実】インターネットサービスや企業の基幹システムを支えるデータセンターの「頭脳」をめぐり、劣勢が目立っていた米インテルが動き出した。6日は新製品の発表に合わせ、受託製造への参入を改めて強調した。念頭に置くのはIT(情報技術)大手で広がる自社開発の動きだ。半導体の国産化機運も捉え「インサイド」の解釈を広げる。

「人類にとって今ほど技術が重要になった時はない」。インテルのパット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)は6日、「Xeon」と呼ぶデータセンター向けCPU(中央演算処理装置)の新製品を発表した。従来と比べて処理性能を5割近く上げ、人工知能(AI)計算やセキュリティーを強化した。クラウドコンピューティング大手の米マイクロソフトなどが採用を決めた。

新製品を紹介するインテルのゲルシンガーCEO

動画配信の「ネットフリックス」からビデオ会議の「Zoom(ズーム)」まで、日常生活に欠かせないネットサービスはデータセンターが支えている。そこに並ぶコンピューターに載せる汎用CPUで、インテルは約9割のシェアを握る最大手だ。とはいえ、左うちわで過ごせる状況ではない。

競合する米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)はかつて4%に満たなかったシェアを、過去数年で1割に伸ばした。設計の見直しとともに台湾積体電路製造(TSMC)の先端ラインでの委託生産に切り替え、性能を飛躍させた。

さらに、汎用ではないプロセッサーが勢力を伸ばす。クラウド最大手の米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が英アームの設計図を基に開発した「グラビトン」が一例だ。クラウドで必要な処理に特化し、汎用CPUと比べてコストに対する性能を大幅に高めたという。米ネットフリックスや米スナップが活用する。

「インテルは重要な協業相手だが、顧客には常に選択肢を用意する」とAWSのバイスプレジデント、ラジ・パイ氏は言う。クラウドの利用が広がるなかで「八方美人」をめざす汎用チップでは非効率な用途も増える。グーグルやマイクロソフトなど大手は軒並み自社開発を進め、採用拡大を狙うアームは3月、10年ぶりに設計を更新した。

インテルにとり、データセンター向けの半導体はパソコン向けと並ぶ「金のなる木」だ。2020年の全社売上高は778億ドル(約8兆5500億円)と世界の半導体企業で最も大きく、粗利率は56%に上る。ただ巨大なコンピューターであるデータセンターは切り替えに時間がかかるだけとの見方もあり、シェア低下の懸念は強まっている。

そこで3月に打ち出したのが、2兆円の工場投資と「ファウンドリー」と呼ばれる受託製造ビジネスへの進出だ。米国のバイデン政権を始め、西側諸国では半導体の自国内での生産拡大をめざす動きが広がる。ゲルシンガー氏も記者会見では「安全保障」の大義を掲げたが、実はインテル自身を脱皮させる狙いもある。

インテルの受託製造参入に米欧のIT各社が支持を表明した

インテルは受託事業で、アームの設計情報に基づく半導体の生産も手掛けると表明している。現状、アーム設計品の多くはTSMCで製造しており、供給制約の不安がつきまとう。直近までクラウド関連ソフト大手のCEOを務めていたゲルシンガー氏の人脈もあるが、クラウド大手3社を含め、受託構想には米IT各社が「支持」を示した。

さらに、インテルは自社の知的財産(IP)である「x86」の設計データを開放する方針を示す。詳細は明かしていないものの、IT業界で普及した「x86」の技術を基にチップを作れるならばアーム依存を嫌う顧客が注文する可能性は高い。自社ブランドの製品に限らず、IPや製造も含めて「インテル・インサイド」を守ろうという策だ。

IT業界に詳しい米フーチュラム・リサーチのダニエル・ニューマン首席アナリストは「収入源を多様化し、客を完全に失うリスクを最小化できる」と評価する。インテルの株価はITバブル時に届かないものの、直近1年の底だった20年10月末と比べるとCEO交代を経て5割近く上昇した。株式市場は久々に同社への期待を持ち始めている。

とはいえ、計画通りに実行できなければ「絵に描いた餅」で終わる。6日に出した新製品で採用している製造技術は「10ナノ」と呼ぶもので、他社の「7ナノ」に相当する。半導体業界の最先端ではなく、これ以上の遅れが許される時間はない。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

関連企業・業界

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン