米国、メキシコのトウモロコシ輸入制限に反発 協議要請

【メキシコシティ=清水孝輔】米通商代表部(USTR)は6日、メキシコ政府による遺伝子組み換えトウモロコシの輸入制限について協議を要請したと発表した。これまでも同国政府に懸念を伝えてきたが、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に基づく正式な協議に進む。協議で解決しなければ紛争解決委員会を設置する可能性を示唆しており、対立が強まっている。
USTRのタイ代表は6日、声明で「米国はメキシコのバイオ技術に関する政策への深刻な懸念と科学に基づいた手法の重要性を繰り返し表明してきた」と説明した。USTRは「(協議で)解決しなければあらゆる措置を検討する」とUSMCAに基づく紛争解決委員会の設置を要請する可能性を示唆した。
メキシコ政府は2020年、遺伝子組み換えトウモロコシの輸入を24年までに禁止すると表明した。米国内のトウモロコシ農家の反発を受け、米政府はメキシコ政府に懸念を伝えてきた。メキシコ経済省は2月、当面は家畜の飼料向けなど一部のトウモロコシの輸入を続けると発表した。
メキシコはトルティーヤ向けの白いトウモロコシを自国で多く生産しており、米国からは主に飼料向けの黄色いトウモロコシを輸入している。メキシコ経済省は飼料向けなどを輸入制限の対象外にしたことで、米国側との摩擦を解消できるという考えを示していた。だが実際には米政府はメキシコ政府の政策を問題視し続けている。
メキシコ経済省は6日、USTRの協議要請を受けて「メキシコはUSMCAの枠組みを活用し、(トウモロコシ輸入制限が)商業的な影響を及ぼさず、(USMCAの)協定にも反していないというデータと証拠を示していく」と声明を出した。
米政府はこれまでもメキシコ政府の複数の政策がUSMCAに反すると主張してきた。22年7月にはメキシコ政府の保護主義的なエネルギー政策を問題視し、USMCAに基づく協議を要請した。絶滅危惧種である希少イルカの保護についてもメキシコ政府の対応が不十分だと指摘し、改善を促してきた。
米政府はUSMCAを通じてメキシコの労働環境にも圧力をかけている。USTRは6日、メキシコ中部ケレタロ州にある米自動車部品ユニーク・ファブリケーティングの工場を調査するようにメキシコ政府に要請した。同工場の労働者の団体交渉権が侵害されている可能性があると指摘した。