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マスク氏、自前SNSで政治的発信 炭素税提案も

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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞
テスラのマスクCEOはバイデン米政権に炭素税の導入を働きかけたという=AP

米電気自動車(EV)メーカーのテスラが脱炭素社会の実現に向けた政治的な動きを強めている。自社製品のオーナー向けSNS(交流サイト)を開設し、立法府の議員らへ意見発信などを呼びかけ始めた。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)がバイデン米政権に提案した「炭素税」の実現などを働きかけていく可能性がある。

テスラの公共政策チームが主導し、オーナーやファンらが集う「テスラ・エンゲージメント・ハブ」と呼ぶウェブサイトを3月上旬に開設した。クリーンエネルギーの普及に向けた同社の政治的な取り組みを紹介するほか、テスラ製品のオーナー同士が意見交換できるSNSの機能などを持たせた。

テスラが開設したオーナー向けSNSのトップ画面

同チームは最初の投稿の中で、SNS開設の狙いについて「コミュニティーのメンバーがテスラの関心事を知り、有意義な行動をとり、情報を共有することだ」と述べた。熱狂的なことで知られるマスク氏の支持者らの声を束ねることで、各国・地域の政府に自社に有利なルールづくりを求めていく考えとみられる。

テスラはSNS向けの具体的な話題として、新規参入した車メーカーに代理店販売を義務付けるネブラスカ州の事例などを取り上げた。テスラは直接販売を原則としており、同州には店舗を構えられていない。規制緩和を検討している州議会議員らの氏名も記し、オーナーらに消費者の声を伝えるよう促している。

また、寒波による電力危機に見舞われたテキサス州の災害救助策を知らせる欄では、慈善団体などへの寄付を呼びかけている。テスラは同州で新たなEV工場を建設中で、地元住民らに好印象を与える狙いがあるもようだ。

マスク氏は2月に出演した米コメディアンの音声番組「ポッドキャスト」で、バイデン政権に対し炭素税の導入を提案したと明らかにしている。バイデン政権側は「政治的に難しすぎる」と否定的だったというが、テスラが開設したSNSで今後、政権への圧力を強める議論が始まる可能性もある。

炭素税は温暖化ガスに価格をつける「カーボンプライシング」の仕組みの1つで、化石燃料に含まれる炭素の含有量に応じて税金をかける。排出量の削減に効果的とされ、ノルウェーなど欧州では既に制度の運用が始まっている。自動車産業についても、ガソリン車からEVへの電動化シフトを加速させる効果があると見込まれている。

バイデン米大統領は再生可能エネルギーへの大型投資を掲げて2020年の大統領選でトランプ前大統領に勝利した。選挙公約では35年までに電力部門からの炭素の排出をなくし、50年までに「100%クリーンなエネルギー経済」に到達することを掲げている。1月には就任初日に温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」への復帰を命じる大統領令に署名した。

バイデン政権は環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税を課す「国境炭素税」の導入にも前向きとされるが、米国内での炭素税の導入はハードルが高いとみられている。負担増を迫られる石油・ガス産業からの反発が避けられないためだ。

マスク氏は2月のポッドキャストでの対談で、「石油・ガス産業を悪者扱いすることには賛成していない」とも述べ、新旧産業の対立をあおることには慎重な姿勢を示した。「もし炭素に価格をつければ、市場は賢明な方法で反応するだろう」とも指摘し、炭素税によってクリーンエネルギーへの移行を段階的に促進できるとの考えを示した。

カーボンプライシングを導入することなく、気候変動危機を解決することはできないという考え方は、経済学者の間ではすでに支配的だ。19年には3000人を超える経済学者が連名で炭素税の導入などを米政府に要望した。バイデン政権で財務長官に就いたイエレン氏も炭素税を支持していることで知られる。

マスク氏はツイッター上では4800万人を超えるフォロワーを抱え、世界で最も影響力の大きい起業家の1人とみなされる。同氏が掲げる脱石油依存社会からの脱却に共鳴し、テスラ製品を買う消費者も多い。同社が自前のSNSを通じて試み始めた政治的なキャンペーンは、米世論を動かす可能性もありそうだ。

(シリコンバレー=白石武志)

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