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原油減産、対ロシア制裁空転も 価格上限の効力そぐ

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ウクライナ侵攻を続けるロシアへの経済制裁が空転する懸念が浮上している。サウジアラビアなどの主要産油国が5日、大幅な減産を決めたことで、主要7カ国(G7)が目指すロシア産原油への価格上限設定が機能するかどうか不透明になった。減産で原油価格上昇が見込まれ、ロシアの収入削減へのハードルが上がる。米国と中東産油国との溝も鮮明になった。

「石油輸出国機構(OPEC)プラスがロシアと手を組んだのは明確だ」。ジャンピエール米大統領報道官は5日、南部フロリダ州に向かう大統領専用機内で記者団に語り、不快感を示した。

米欧がウクライナ侵攻を続けるロシアの原油収入を減らす政策を進めるなか、OPECとロシアなど非加盟の主要産油国でつくるOPECプラスが11月に日量200万バレル(世界需要の2%)を減産すると決めたからだ。

原油の国際指標、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物は6日、一時1バレル88ドル台で推移した。OPECプラスの閣僚級会合が開かれた5日と比べれば値動きは小幅だが、今後供給不足が顕在化すれば、一段の価格上昇を招く懸念がある。

今回の大幅減産は、ロシア産原油の価格上限措置に影を落とす。

欧州連合(EU)加盟国は5日、G7の合意に基づき、ロシア産原油の価格に上限を設けると合意した。だが減産で供給が減れば、中東産油国やロシアの価格主導権が強まる。今は中国やインドが比較的安い価格でロシア産原油を購入しているが、需給が引き締まれば、ロシア産原油を高値でも買う動きが出てくる可能性がある。

原油価格が一段と上昇すれば、販売量が減ってもロシアは収入を増やせる可能性もある。強力な経済制裁を通じてロシアの戦費調達を困難にする米欧の目標実現が遠のいてしまう。

実際、専門家や市場関係者からは世界で原油が供給不足に転じ、価格が上昇するとの見方が強まっている。

石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の野神隆之首席エコノミストの試算では、仮に計画の半分にあたる100万バレルの減産が実施された場合、世界の原油需給は2022年10~12月期に日量10万バレル程度の供給不足に転じる。従来は数十万バレルの供給過剰と見込んでいた。23年10~12月期には200万バレル超の供給不足になる。産油国が計画通りに200万バレルの減産を進めれば、供給不足は一段と拡大する。

供給懸念が強まれば、原油相場は一段と上昇する可能性がある。米ゴールドマン・サックスは5日、23年1~3月期のWTI原油先物の見通しを10ドル引き上げ、1バレル110ドルとした。

中東産油国は08年のリーマン・ショック時のような原油価格の急落を警戒しているとみられる。原油高を維持するため、一段の減産に踏み切る可能性は否定できない。

ロシアのノワク副首相は2年半ぶりの対面開催となった今回のOPECプラスの会合に出席し、産油国同士の連帯を誇示した。ロイター通信によると会合後、ロシア産原油の価格上限について「市場メカニズムの侵害だ。我々は減産の準備ができている」と余裕を見せた。

(ワシントン=中村亮、カイロ=久門武史、コモディティーエディター 浜美佐)

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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