米軍、偵察気球の残骸回収 中国の情報収集能力を分析

【ワシントン=坂口幸裕】米軍は5日、前日に撃墜した中国の偵察気球の回収を進めていると明らかにした。海中に落下した残骸を集めて解析すれば、中国の情報収集能力を評価できる可能性がある。米連邦捜査局(FBI)とも連携して調査を急ぐ方針だ。
北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)・北方軍のバンハーク司令官は5日の声明で「海軍が気球と搭載機器の回収に取り組み、沿岸警備隊が周辺地域の安全確保に協力している」と強調した。
米東部時間4日午後2時39分(日本時間5日午前4時39分)に撃墜した偵察気球は南部サウスカロライナ州の沖合6マイル(約10キロメートル)ほどの米領海に落下した。残骸は少なくとも7マイル(約11キロメートル)ほどにわたって散らばっているもようだ。

水深47フィート(約14メートル)あたりに沈んだ状態で「回収には何週間もかからず、比較的短時間で済む」(国防総省高官)とみられる。米紙ニューヨーク・タイムズは5日、数日間で終えると報じた。
国防総省によると、米領空を飛来していた中国の偵察気球が機密情報を収集できないよう「あらゆる措置を講じて保護した」。飛行中の気球と関連機器を調査する「貴重な機会だった」とも明らかにした。
米軍がアリューシャン列島付近の米領空に気球が侵入したのを最初に確認したのは1月28日だった。米アラスカ州を横断して同30日にカナダ領空を通過後、同31日に西部アイダホ州の上空で再び米領空に入った。
その後、飛行したモンタナ州には大陸間弾道ミサイル(ICBM)を運用するマルムストロム米空軍基地がある。米国防総省高官は4日、気球の経路を踏まえ「意図的に米国とカナダを横断し、機密の軍事施設を偵察しようとしたと確信している」と説明した。
防衛研究所の高橋杉雄防衛政策研究室長は、気球は「中国による情報収集と推測できる。今後アメリカの回収作業が終わればより明確になる」と指摘。気球は「1カ所に長い間とどまることができるうえ、より地表に近く、衛星に比べ画像の精度が高い」と強調した。「(大気の上層部にある)電離層の影響を受けないため、より精度の高い電波の情報を取得することも可能だ」と話した。
米国は過去に少なくともトランプ前政権時代に3回、バイデン政権発足後に1回は米領空で中国の偵察気球を確認している。これまでは領空での滞在時間は短かったとしており、状況が異なるとみられる。

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