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米英豪、軍事技術で協力拡大 極超音速兵器で中ロに遅れ

(更新)

【ワシントン=中村亮、ロンドン=中島裕介】米国と英国、オーストラリアは5日、極超音速兵器や自律型無人潜水機の開発など8分野での協力を発表した。先端技術での協力を拡大し、中国に対抗する姿勢を鮮明にした。ロシアによるウクライナ侵攻が続くなかでもインド太平洋地域を重視する意向を示す狙いもある。

バイデン米大統領と英国のジョンソン首相、豪州のモリソン首相は5日の共同声明で「自由で開かれたインド太平洋に向けた関与を再確認した」と言明した。ウクライナ侵攻を非難したうえで「人権や法の統治、威圧のない紛争の平和的解決を尊重する国際システムへの揺るぎない関与を重ねて申し合わせた」とも強調した。

米英豪は2021年9月、インド太平洋地域での安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」を創設した。米英が豪州に原子力潜水艦の技術を供与すると合意していたが、5日には新たに8分野での協力をまとめた。

具体的には音速の5倍(マッハ5)以上で変則飛行する極超音速兵器の開発で協力を打ち出した。米豪は20年末に共同開発を発表しており、英国を加えて開発加速を目指す。

米国防総省は中国が20年に極超音速滑空体を搭載できる中距離ミサイル「DF17」を実戦配備したと分析している。ロシアはウクライナで、「極超音速兵器」と主張する空中発射型ミサイル「キンジャル」を初めて実戦使用した。米国の開発は遅れ気味で英豪はいまだ開発の初期段階にあり、中ロの後塵(こうじん)を拝している状況だ。

米国防高等研究計画局(DARPA)は5日、極超音速巡航ミサイルの実験に最近成功していたと発表した。米軍は核態勢を強化するロシアとの緊張拡大を避けるために大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を中止しており、極超音速兵器の開発を優先する姿勢が際立つ。米陸軍は23年中の配備を目指している。

米英豪は迎撃が困難とされる極超音速ミサイルを阻止する装備の開発でも協力することで一致した。特に英国は、防衛装備開発への関心がより強い。ロシアが極超音速兵器の開発や実戦配備を進めれば、地理的に近い欧州での安全保障上の脅威が格段に増すためだ。

英紙タイムズは、「極超音速ミサイルの飛行経路を狂わせるレーザー兵器や標的の隠蔽の技術が対抗装備計画の一部になり得る」とする英政府筋の話を伝えた。3カ国は極超音速兵器とその防衛に関する情報と技術を共有し、他国の開発情報も収集することでこの分野での優位性を取り戻したい考えだ。

米英豪は自律型無人潜水機の開発に向けた実験を23年に実行すると明らかにした。インド太平洋では広大な海が戦闘の舞台になる公算が大きく、情報収集や対潜水艦作戦の重要度が増す。ホワイトハウスは声明で、自律型無人潜水機について「我々の海軍力を大幅に増強する」と訴えた。

オースティン米国防長官は5日、下院軍事委員会の公聴会で「中国は強力な海中能力を持っている」と警戒感を示した。米国防総省の報告書によると中国は20年に約70隻の潜水艦を保有し、米国がインド太平洋地域に展開しているとされる10隻程度を大きく上回る。米国の同盟国も潜水艦を保有しており単純な戦力比較は難しいが、中国の戦力が増しているのは明白だ。

3カ国は人工知能(AI)でも協力する。米軍はAIなどを駆使して、敵の位置把握から最適な攻撃手法の選定、攻撃実行にかかる時間を大幅に短くする目標を掲げる。実現には同盟国やパートナー国から情報提供を受ける必要があり、3カ国の協力も将来的な軍事作戦を視野に入れたものとみられる。

新アメリカ安全保障センターのリサ・カーティス上級研究員はオーカスの協力拡大について「ロシアがウクライナで引き起こした戦争中でも米国はインド太平洋で実行すべき課題から目を背けないというシグナルを中国や(インド太平洋)地域に送った」と指摘する。

英首相官邸の関係者は「ロシアの国際法違反を指摘する側になるよう中国を説得することと、中国の人権や強硬的な海洋進出などの問題を指摘すること。この2点は続けねばならない」と語る。ウクライナ危機に注目が集まっても中国への一定のけん制は欠かせないとの立場だ。

欧州に展開する米軍の規模は10万人規模と2月上旬から1割以上増えた。アジア各国がバイデン政権によるインド太平洋への関与が揺らいでいるとみなせば、中国に融和的な外交政策をとらざるを得なくなる。米政権は国際協調を通じて中国に圧力を強める構えで、オーカスを通じてアジア各国のつなぎ留めを図る思惑も透ける。

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