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ワーナーも広告付き無料動画、23年にも 出遅れに懸念

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

4月に誕生した新メディアの巨人「ワーナー・ブラザース・ディスカバリー」の動画配信の戦略が明らかになった。2023年夏までに傘下の2つのサービスを統合し、同年後半には無料の広告付きプランの投入を検討する。すでに米国の動画配信サービスは競争が激化しており、周回遅れの対応には課題も多い。

幅広いコンテンツ強み

同社は米通信大手AT&Tから分離したメディア大手ワーナーメディアと米同業ディスカバリーが合併して誕生した。ワーナーメディアはニュース局のCNNやドラマ局のHBO、映画のワーナー・ブラザースなどを傘下に抱え、ディスカバリーは料理や旅行などリアリティー番組に強い。先行するネットフリックスやウォルト・ディズニーとは異なる幅広いコンテンツを持つことが特徴だ。

今まではワーナーメディア側が「HBOマックス」、ディスカバリー側が「ディスカバリー+(プラス)」と、別々の動画配信サービスを提供していた。だが同社は8月上旬、23年夏に北米でこの2つを統合した動画配信サービスを始める計画を明らかにした。中南米や欧州、アジアでも順次、サービスを展開する見通しだ。

新サービスの名前や価格は今後詰める。米国ではHBO、ディスカバリーともに知名度は高く、新サービスの詳細決定には難航が予想される。

「最終的にすべて(のコンテンツ)を1つの場所で提供することが最善の事業モデルだ」。ワーナー・ブラザース・ディスカバリーのグローバルストリーミング事業のトップ、JB・ペレッツ氏は統合の意図をこう説明する。新サービスは「家族の誰もが視聴したい番組があるものになる」という。

米国ではネトフリのほか、ディズニーの「ディズニー+(プラス)」やNBCユニバーサルの「ピーコック」など動画配信サービスが乱立する。さらにインフレの加速で消費者が娯楽に充てる予算は縮んでいる。限られた予算で複数のサービスを契約する世帯が増え、最近では広告付きで価格を抑えた動画配信サービスが支持を広げている。

こうした趣向の変化に、動画配信市場のトップを走ってきたネトフリも対応を迫られた。広告を付ける代わりに価格を抑えたプランを導入する計画を明らかにし、新プランの開発で米マイクロソフトと提携した。2四半期続けて会員数が減り、貫いてきた広告なしの方針の転換を余儀なくされた。ワーナー・ブラザース・ディスカバリーが無料の広告付きプランを導入するのは、こうした他社の動きが背景にある。

最終赤字4800億円

デビッド・ザスラフ最高経営責任者(CEO)によると、統合した2つの動画配信サービスを23年夏に立ち上げたのちに無料版の投入を検討する。「予算に敏感な視聴者が(同社の)有料サービスを契約する前に試せる『入り口』のような役目を果たすことを期待している」と、ザスラフ氏は言う。

同社の業績は低迷する。4~6月期の最終損益は34億1800万ドル(約4800億円)の大幅赤字となった。動画配信サービスの統合準備など合併費用がかさんだ。長期では合併により年間30億ドルのコスト削減効果を期待しているが、効果が出るのはまだ先だ。統合時点で550億ドルの負債を抱えており、赤字体質を改善するためのコスト削減が最優先課題となる。

決算発表の翌日、同社株の終値は前日比で16%超下がった。いまも統合時より4割以上安い水準だ。巨額赤字と23年後半以降という無料版の投入の遅さに市場は失望した。

「バットガール」お蔵入り

経営陣はコスト削減に着手したが、なりふり構わず進めれば経営リスクにもなる。4月、傘下の米報道局「CNN」のストリーミング配信サービス「CNN+(プラス)」を開始から1カ月で打ち切った。最近になり、すでに9000万ドルを投じて完成間近だったヒーロー映画「バットガール」のお蔵入りを決めた。

米メディアは「バットガールを負債として処理した方が同社にとって財務上有利なための決断だ」と報じた。経営陣は「ヒーロー映画を配信サービスのみで公開することをやめ、劇場中心にする戦略転換のため」と説明したが、ハリウッドの制作陣やヒーロー映画のファンから反発の声が上がった。コスト管理を優先するメディア企業というレッテルがつくと、優秀な人材が集まらなくなる可能性がある。契約者数を3年間で約4割増やし、25年に1億3000万人を目標に掲げるが前途は多難だ。

(ニューヨーク=清水石珠実)

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