米新聞大手トリビューンに対抗買収案、欧米富豪2人
【ニューヨーク=清水石珠実】名門地方紙「シカゴ・トリビューン」などを傘下に持つ米新聞大手トリビューン・パブリッシングは5日、欧米の資産家2人が共同で設立した企業から新たに買収提案を受けたと発表した。
トリビューンは2月中旬、筆頭株主の米投資ファンド、アルデン・グローバル・キャピタルによる買収提案を受け入れると発表していた。だが今回、対抗案のほうが同社の企業価値を高く評価したことを受けて、富豪2人側とも買収交渉を行う方針を明らかにした。
現時点でアルデンとの買収合意に変更はないという。だが、対抗案が出たことで、アルデン側が買収金額を引き上げるなどの対応に出れば、今後買収合戦に発展する可能性もある。
新たな買収提案を行ったのは、米メリーランド州ボルティモアに拠点を置く米チョイス・ホテルズのスチュワート・バイナム会長と、医療機器分野で財を成したスイス人富豪のハンスユルグ・ヴィース氏。2人は共同で合同会社(LLC)「ニュースライト」を設立し、トリビューン株1株あたり18.50ドル(約2035円)を払う対抗案を出した。アルデンの買収提案は17.25ドルだった。
アルデンは新聞業界へ積極投資するファンドで、傘下に抱える新聞数で業界2位の地位にある。だが、買収した新聞社に大規模なリストラを迫って収益を上げる手法で知られ、トリビューン社員などがアルデンによる買収に強く反発してきた。
バイナム氏は当初、名門地方紙「ボルティモア・サン」を含む地元メリーランド州の3紙のみを買収する方向でアルデン側と交渉してきたが折り合いがつかず、トリビューン全体を買収する戦略に切り替え、共同出資者を募っていた。賛同したヴィース氏はワイオミング州在住で、環境問題対策などに多額の寄付を行う篤志家として知られる。