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EV800兆円市場を争奪 ソニー事業化へ、異業種参入加速

(更新)

成長が見込まれる電気自動車(EV)市場に異業種が参入を目指す動きが活発になってきた。ソニーグループが4日、発売を含む事業化の本格検討を始めると表明。米国や中国でもIT(情報技術)企業による取り組みが目立つ。今後10年で800兆円規模に拡大するとされる一大市場は争奪戦の様相を呈してきたが、曲折を予想する声もある。

「当社の持つ人工知能(AI)やロボティクスの能力を活用して多様で革新的なソリューション(問題解決策)を提供する大きな一歩だ」。ソニーグループの吉田憲一郎会長兼社長は4日、米ラスベガスで開催中のテクノロジー見本市「CES」の会場で記者会見を開き、こう力を込めた。

ソニー(現ソニーグループ)がEVの試作車を公表したのは2020年のことだ。当時から高いデザイン性などを評価する声があったものの、事業化については慎重な姿勢を崩さなかった。「試作車への取り組みから多くを学んだ」(吉田氏)ことに加え、この間に外部環境も大きく変化した。

米調査会社ブルームバーグNEFの21年6月の予想によると、世界の燃料電池車を含むEV市場は30年までの累計で7兆ドル(約810兆円)に達する。21年8月には中国に続いて世界2位の自動車市場である米国でもEVの導入を促進する大統領令が出されるなど、市場拡大に弾みがつく可能性が高い。

こうした環境のもと、米テスラをはじめとするスタートアップ企業、既存の自動車大手に続く「第三極」として成長市場の取り込みを狙うのがソニーグループなどの異業種だ。米アップルは自動車関連の人材獲得に動き、1年ほど前には韓国・現代自動車などと提携交渉を進めていることが表面化した。

アジアでも中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)がEV関連事業への参入を進めている。電子機器の受託製造サービス(EMS)最大手としてアップルやソニーグループなどの生産を担っている台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業も製造への参入を目指し、米国で米ゼネラル・モーターズ(GM)の閉鎖工場を買収した。

アップルやファーウェイは得意とするソフト開発の技術を応用する考えとみられ、鴻海は部品の調達力などを生かしたい考えだ。自動車産業は新規参入が難しいとされてきたが、「動力源がエンジンからモーターに変わり、IT企業が参入する契機になる」(鴻海の劉揚偉董事長)とみる異業種の企業が多い。

ソニーグループはEV事業に不可欠とみるセンサーやクラウドコンピューティング、高速通信規格「5G」などの技術を社内に抱え、エンターテインメントやコンテンツ資産も活用できる。物言う株主などから複合経営を批判されてきた経緯があり、EVを自社ならではの「総合力」を生かせる分野として有望視している可能性が高い。

ただ、事業化に向けた課題がある。ひとつは量産の壁だ。「試作品を作るのは比較的簡単だが、大規模な製造は非常に難しい。製造システムの設計は自動車そのものの設計より100倍困難だ」。EVで先行したテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)はこう語り、何度も綱渡りを余儀なくされたことが明らかになっている。

採算性にも課題がある。中国の新興企業などが価格競争を仕掛けているほか、大手と新興、異業種の三つどもえの戦いのなか、利益を確保しづらくなる恐れがある。実際、ソニーグループと同じ家電事業を「祖業」とする英ダイソンは19年、準備を進めてきたEV事業への参入を断念した。

事業を成功に導くカギを握りそうなのは、多様なパートナー企業との連携だ。ソニーは20年に公開した試作車で自動車版EMSなどと呼ばれるオーストリアのマグナ・シュタイヤーなどから協力を得た。4日に公開した多目的スポーツ車(SUV)型の「VISION-S 02」も同社が製造を担ったようだ。

ソニー幹部は20年、「単独で事業化するよりも、既存大手などと提携するのが現実的。興味を持ってもらうために試作車を公表した」と話していた。製造などで実績を積んだメーカーとの連携も含め、事業を進めるための枠組みの構築が課題になる。既存企業は強力なライバルにもなり得る後続企業との間合いを問われることになる。

(ラスベガス=奥平和行)

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