米民主、大統領選初戦州を52年ぶり変更 24年再選に布石

【ワシントン=坂口幸裕】米民主党全国委員会は4日、2024年11月に実施する大統領選の党候補者指名争いの初戦を南部サウスカロライナ州の予備選にすると承認した。中西部アイオワ州だった慣例を52年ぶりに改める。20年大統領選で黒人支持者が多いサウスカロライナの初勝利で選挙戦に勢いを付けたバイデン大統領が主導し、意欲を示す再選に布石を打った。
民主全国委は新日程について24年2月3日のサウスカロライナに続き、同6日に東部ニューハンプシャー州と西部ネバダ州、同13日に南部ジョージア州、同27日に中西部ミシガン州で実施する案を採択した。
そのほかの州は、多数が3月上旬の火曜日に選挙を同時実施する最大の山場「スーパーチューズデー」などを経て、6月上旬までの間に予備選挙や党員集会を開催。その後の夏の党大会で候補者を正式に指名する運びを想定する。

「あと4年!あと4年!」。3日夕、東部ペンシルベニア州フィラデルフィアで開いた民主党全国委の冬季会合。バイデン氏が演壇にあがると、支持者から24年大統領選への再選出馬を促す声があがった。
バイデン氏は演説でトランプ前大統領の影響力が残る野党・共和党を批判。「かつての党と違い、彼らは保守でなく破壊的な連中だ。我々がなし遂げた前進を破壊するつもりだ」と断じ、対決姿勢を鮮明にした。
バイデン氏は7日に連邦議会で臨む一般教書演説後に正式に立候補を表明する案が取り沙汰される。4日の党会合で正式に決まった党員集会・予備選の段取りの変更はバイデン氏の強い意向で流れが固まった。
ニューハンプシャーの民主党員は反発している。州法で全米で最初に予備選を開くと明記しており、党が決めた日程を前倒しして開催すべきだとの意見もあるという。
1972年から初戦の党員集会を実施してきたアイオワは人口の9割ほどを白人が占める。黒人やヒスパニック(中南米系)など非白人層に強みを持つ民主の支持層全体を反映していないとの声が党内に根強くあった。
バイデン氏は22年12月に党に送った書簡で「有色人種の有権者が候補者選びの早い段階から発言権を持てるようにしなければならない」と強調。「黒人、アジア系らの有権者から圧倒的な支持を得られない限り、民主候補になって選挙で勝つことはできない」と訴えた。
バイデン氏の発案で決まった初戦の州は因縁の地でもある。20年大統領選の党候補者指名争いで、同氏は初戦のアイオワ、2戦目のニューハンプシャーで惨敗。4戦目となったサウスカロライナで黒人票を得て初勝利し、指名獲得に弾みをつけた。
サウスカロライナの全人口に占める黒人の割合は3割ほどだが、民主支持層における黒人の比率は他州に比べて高い6割ほどを占める。22年11月の中間選挙で民主が上院の多数派を維持する分かれ目となったジョージアやネバダも序盤の実施を決めた。
バイデン氏はアイオワが採用する党員集会を巡っても「排他的だ」と問題視した。原則、無記名投票で実施する予備選と異なり、話し合いなどで決めるプロセスがわかりにくい。有権者の投票先が公になるため投票率が低くなりやすい面もある。20年は集計ミスで当日深夜に大勢が判明せず、民主党内で見直し論が一段と広がった。
共和は初陣をアイオワのままにするが、共和から立候補をめざすトランプ氏もサウスカロライナを重視する。選挙戦を本格始動した1月28日にサウスカロライナで集会を開いた。トランプ氏が勝利した16年大統領選の党予備選の初戦だったアイオワで敗れたものの、2戦目のニューハンプシャー、3戦目のサウスカロライナで連勝した。
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