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バイデン米政権、核近代化を継続 「核なき世界」遠く 

(更新)
米中ロは核戦力の近代化を進めている(20年12月、ロシア国防省が公開したICBM発射実験の動画より)=AP

【ワシントン=中村亮】バイデン米大統領は3日、ロシアとの核軍縮条約の延長に正式合意した。盟友のオバマ元大統領から引き継いだ「核なき世界」に向け面目を保ったが、急ピッチで軍拡を進める中国への対抗上、抜本的な核軍縮は難しい。大国間競争を踏まえた現実路線として、歴代政権が掲げてきた核の近代化計画を継承する。

「制御なき核競争は全ての者を危険にさらす」。ブリンケン米国務長官は3日の声明で、新戦略兵器削減条約(新START)を失効させた場合のリスクをこう強調した。新START延長の効果は冷戦期の米ソのような軍拡競争の抑止だけではない。世界の核弾頭の9割を保有する米ロに核開発の制約がなくなれば他国に非核化や軍縮を迫る正当性が薄れ、核不拡散体制が一段と弱体化する恐れがあった。

米国ではオバマ政権が核軍縮を提唱しつつ、30年間で1兆ドルを投じる核兵器の近代化計画を進めた。条約に従って兵器の保有や配備数が減っても、それぞれの兵器の性能を高めて核抑止力の維持を目指す戦略だ。米国は陸海空で核兵器の使用態勢を整えており、各領域で兵器の新規開発や改良、更新が進む。オースティン国防長官は1月の議会公聴会で近代化計画を支持する考えを示しており、バイデン政権も核近代化を継続する。

トランプ前政権はオバマ氏の近代化計画を引き継いだうえで、2018年の「核体制の見直し」で2つの核戦力を追加した。一つは潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に搭載する小型核だ。敵基地や戦闘地帯に対象を絞った攻撃が可能となり、一般市民への被害を抑えるという。海軍は20年2月に実戦配備したと明らかにした。

もう一つはオバマ政権が核なき世界に向けた具体策として廃棄を決めた海上発射型巡航ミサイルだ。トランプ政権がオバマ氏の決定を覆し、開発・配備の再開を決めた。国防総省は20年2月、20年代後半に実戦配備する予定だと明らかにした。

バイデン政権が1期目にまとめるとみられる「核体制の見直し」で、トランプ政権が追加した2つの核戦力を撤回するかどうかが核軍縮に向けた試金石になりそうだ。

核軍縮の壁になるのが中国の存在だ。米国防総省は20年9月に発表した報告書で、中国が200発を超える核弾頭を保有し、今後10年で倍増させるとの見通しを示した。中国軍が大陸間弾道ミサイル(ICBM)など米本土を攻撃可能な核戦力を急拡大。米ロと同様に陸海空で核兵器の使用態勢を構築しつつあるとみる。

ロシアも核兵器の近代化を急いでいる。プーチン大統領は18年の年次教書演説で大々的に新型核兵器の開発を披露した。米国のミサイル防衛網に対抗して迎撃が難しいとされる極超音速兵器の開発を進め、19年末に極超音速ミサイルシステム「アバンガルド」を配備した。20年10月には潜水艦などに配備予定の極超音速巡航ミサイルの発射実験に成功したと発表した。

「広島と長崎の惨事が繰り返されないよう、核兵器のない世界に近づくよう取り組む」。バイデン氏は20年8月、広島への原爆投下から75年の節目に合わせた声明でこう力説した。ただオバマ氏が「核なき世界」を提唱した09年に比べて中国は軍事力を大幅に向上させ、ロシアを含めた大国間競争は激しくなるばかりだ。元ホワイトハウス高官は「スローガンを掲げても実行することが一段と難しくなっている」とみる。

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