米ブラックロック、個人の議決権行使に道 まず英国で - 日本経済新聞
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米ブラックロック、個人の議決権行使に道 まず英国で

【ニューヨーク=伴百江】資産運用最大手の米ブラックロックは3日、ファンドの投資先企業の株主総会で議決権を行使できる投資家を機関投資家だけでなく、個人にも広げる計画を発表した。昨年に顧客である年金基金などを対象に議決権行使を委譲する選択肢を設けた。将来的に、同社のファンドを保有する個人投資家も直接行使できる道を開く。まず英国の個人向けに試験的に導入する。

ブラックロックは指数連動型のインデックスファンドなどで約8兆ドル(約1170兆円)の資産を運用する。議決権行使を通じて投資先のガバナンス(企業統治)に対する影響力も高まっている。一方でファンドの投資家の希望に反するような議決権行使への批判も出ていた。新型コロナウイルス禍で市場環境が激変するなか、運用会社として企業のESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みを後押しすべきだとの声も高まっている。

ブラックロックは昨年から年金基金や大学基金などの顧客に議決権を直接行使できる仕組みを設けた。対象となるのは、ブラックロックが米国と英国で手がけるインデックス運用の資産1.8兆ドル。開始から1年たって、対象資産の約25%にあたる総額4720億ドルの運用資産を持つ機関投資家が議決権を直接行使するプログラムに登録したという。

この選択肢を英国の個人に広げ、今年末から来年にかけて試験的に導入する計画だ。ラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)はこのほど顧客投資家と投資先企業のCEOに宛てた書簡を公表した。運用会社ではなく投資家が自ら議決権を行使できる仕組みについて「投資家と企業の関係を変える力がある。普及すれば株主民主主義に新たな声を呼び込み、企業統治をさらに強化できる」と強調した。

同様な取り組みは広がっている。競合のバンガード・グループやチャールズ・シュワブも10月にファンドを保有する個人投資家が直接、議決権行使ができるプログラムを投入する計画を発表した。ただ、米国では投資信託を保有する個人投資家が議決権を行使できるようにするには規制の変更が必要なため、実現には時間がかかるもようだ。

米国ではESGを巡る政治的分断が深まっている。共和党支持者の多い州は気候変動対策を重視する金融機関に反発し、州の年金の運用委託停止を突きつけている。一方、民主党が強い自治体では運用会社に積極的な対応を求めるなど、要求が割れている。運用業界では最終投資家に議決権行使を委譲することでこうした対立が解消できるかどうかに注目が集まっている。

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