米国、ウクライナに長距離兵器供与へ クリミアが射程に

【ワシントン=芦塚智子】米政府は3日、ウクライナに約21億7500万ドル(約2850億円)相当の武器を追加供与すると発表した。国防総省は地上発射型小直径弾(GLSDB)と呼ばれる長射程のロケット弾が含まれると明らかにした。米メディアによるとGLSDBは射程が約150キロメートルとこれまでに供与した兵器の約2倍で、ロシアが併合したウクライナ南部クリミア半島が射程に入る。
米国がウクライナに長距離兵器を供与するのは初めて。国防総省のライダー報道官は3日の記者会見でGLSDBの供与について「ウクライナが自国を防衛する作戦を実行し、ロシア占領地域の主権領土を取り返すための、より長距離の発射能力を提供する」と説明。クリミア攻撃を支援する意図があるのかとの質問に対しては「ウクライナの作戦計画は彼らの決断だ」と回答を避けた。
GLSDBは高機動ロケット砲システム「ハイマース」などから発射する兵器。ウクライナ側は射程が約300キロメートルとさらに長い地対地ミサイル「ATACMS」などの供与を求めていた。米政府は長射程の兵器供与について、ロシア領土内の攻撃に使用されれば事態をエスカレートさせかねないと慎重な姿勢を取ってきた。
米政治サイトのポリティコは、米軍は現在GLSDBを保有しておらず、本来は空中発射型で改造には最高で9カ月かかると報じている。ウクライナ軍が計画しているとされる春から夏にかけての大規模な反攻作戦には間に合わない可能性がある。
供与を発表した武器にはこのほか、ハイマース用の追加の砲弾や、携帯型対戦車ミサイル「ジャベリン」250基、路上爆弾への耐性を強化した新型装甲車「MRAP」181台が含まれる。
バイデン米大統領は1月25日に主力戦車「エイブラムス」31両をウクライナに供与すると発表。戦車の提供に慎重だった姿勢を転換した。ウクライナが求めている米戦闘機「F16」の供与については否定している。ウクライナ支援の姿勢を強調しつつ、緊張の激化を防ぐための難しいかじ取りを迫られている。
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