ロシア、侵攻の口実へ動画捏造か 米「情報を入手」

【ワシントン=坂口幸裕】米国務省のプライス報道官は3日の記者会見で、ロシアがウクライナに再侵攻する口実をでっち上げるための動画をつくっているとの情報を入手したと明らかにした。「ロシアの情報機関が捏造(ねつぞう)したものだ」と非難した。米政府は侵攻を正当化するための準備の一環とみて警戒を強めている。
ウクライナ軍が国境を越えてロシアを攻撃し、民間人の死傷者が出ている映像を含んでいるという。ロシア語を話す弔問客を演じる俳優も登場し、米政府はロシア国民の反ウクライナ感情をあおるプロパガンダ(宣伝活動)のためにロシア政府がつくったとみる。
プライス氏は「ロシアに侵攻を思いとどまらせるために情報を公開した」と強調。「ロシアは対話を継続する意向を示しているが、今回の行動はそのつもりがないことを示唆している。軍事行動を正当化するのを阻止する努力を続ける」と語った。実際の動画を示さず、米政府が入手しているかどうかも明言しなかった。
米メディアによると、動画には北大西洋条約機構(NATO)に加盟するトルコがウクライナに供給している攻撃型ドローンも映っており、NATOの関与をほのめかすつくりになっている。侵攻に対するロシアの世論の支持を広げる思惑もにじむ。米高官は「ロシアの安全保障への脅威を強調し、軍事作戦の根拠にするつもりだろう」と指摘する。
バイデン政権は1月、ロシアがウクライナ東部に工作員を送り込み、侵攻につなげる偽装工作を始めていると明らかにした。ロシア軍はウクライナ国境付近に10万人規模の部隊展開を維持する。
米側はロシアの情報機関がウクライナの親ロシア派を使い、反ロシアの現ウクライナ政権を弱体化させる環境をつくろうとしていると分析する。米財務省は1月、ウクライナの不安定化を狙うロシアの活動を支援したとしてウクライナの現職国会議員らに制裁を科した。議員が影響力を持つウクライナの報道機関を使い、ロシアと対立するウクライナ政府高官の誤情報を意図的に流したと説明した。
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