米国、若いトランスジェンダーへの規制強化 共和党主導

【ニューヨーク=山内菜穂子】米国でトランスジェンダーの若者への規制が強まっている。共和党が地盤を持つ南部テネシー州などで性別適合治療やケアを禁止する法律が相次いで成立した。性的少数者(LGBTQ)の権利を擁護する民主党のバイデン政権に対抗する狙いもあるとみられている。
トランスジェンダーとは出生時の性と自認する性が一致しない人を指す。テネシー州のリー知事は2日、未成年が性別適合のための治療を受けることを禁止する法案に署名した。これに先立ち2月、中西部サウスダコタ州や南部ミシシッピ州でも同様の法律が成立した。
ミシシッピ州のリーブス知事は2月28日、法案に署名した理由について「誤ったイデオロギーのもとで、子どもたちが(自認する性とは)異なる体を持ったと信じ込まされている」と語った。
トランスジェンダーをめぐる規制を主導するのは共和党だ。米公共放送PBSによると今年、全米各地の共和党議員が150を超える法案を議会に提出した。このうち約100の法案が20歳代や未成年のトランスジェンダーを対象としている。
米国ではホルモン治療といった性別適合治療やケアは一般的になりつつある。米小児科学会(AAP)は、特に体に変化が生じる思春期は本人への精神的な負担が大きいとして、保護者らが自認する性を認め、発達段階に応じた包括的なケアを提供することを推奨している。
ロイター通信の調査によると、2021年に「性別違和」と診断された米国の子どもは約4万2000人。17年の3倍近くに増えたという。LGBTQの子どもは自殺を試みる割合が高いことも米疾病対策センター(CDC)などの調査で明らかになっている。
共和党が地盤を持つ州が規制を強める背景には、性的少数者の権利拡大をめざすバイデン政権と民主党への対抗があるとみられている。バイデン大統領は2月の一般教書演説で「LGBTQの米国人、特にトランスジェンダーの若者が安全に尊厳を持って暮らせるように超党派の平等法を可決しよう」と呼びかけた。
共和党が強い州ではトランスジェンダーの人が学校の女子スポーツに参加するのを禁じる動きも広がっている。

アメリカの「バイデン政権」に関する最新ニュースを紹介します。その他、日米関係や米中対立、安全保障問題なども詳しく伝えます。