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FRB議長、供給制約解消「時期極めて不透明」 会見要旨

(更新)

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は3日、米連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に記者会見を開いた。量的緩和の縮小(テーパリング)を決めたことについて「経済が条件を満たした」と述べた。高インフレをもたらしている供給制約が解消する時期は「極めて見通しづらい」との見方も示した。主な発言と質疑応答は以下の通り。

きょう、我々は政策金利をゼロ近傍に据え置いた。我々の目標に向けた米経済の進展に基づき、資産購入の減額を始めると決めた。金融政策は、経済回復を力強く支え続けるだろう。パンデミック(世界的大流行)のもたらす前例のない混乱と経済再開を考慮し、我々は引き続きリスクを注意深く見ており、経済回復のためにあらゆる範囲の行動を取る用意がある。

経済は2021年前半、ワクチン接種の拡大や経済再開と強力な政策によって(年率で)6.5%増のペースで成長した。7~9月期は急速な成長からは鈍化した。旅行や娯楽など、パンデミックの影響を大きく受けた分野の回復を、夏のデルタ型の感染拡大が妨げた。自動車産業を中心に、供給制約で活動が抑制されている。

その結果、個人消費と企業の設備投資の伸びは7~9月期に横ばいとなった。だが財政・金融政策や、家計や企業の健全な財務状況が支えとなり、21年の総需要はとても堅調に推移している。コロナの感染減少に伴って10~12月期の経済は上向き、通年では力強い成長が見込めるだろう。

雇用情勢は改善し続け、求人需要は強いままだ。改善度合いはコロナ感染増によって鈍った。8~9月の月間雇用者数の増加数は平均28万人で、6~7月の100万人より減った。減速は特に娯楽やホテル産業、教育などパンデミックの影響を受けやすい分野で目立った。

労働参加率の低迷は、高齢化と退職増を反映している。働き盛りの世代の参加率もコロナ前と比べて低いのは、子供の世話やウイルスへの懸念によるものでもある。結果として雇用主は求職数を満たすことに苦労している。労働市場の供給制約は経済の進展に伴う雇用増と感染抑制で消えるだろう。

供給と需要の不均衡は、複数の分野で相当な物価上昇をもたらした。特に供給制約は需要回復に生産が追いつく速さを左右する。その結果、全体の物価上昇率は長期的な目標である2%を大きく上回っている。供給制約は想定より大きく長引いている。高インフレの主因はパンデミックによる供給と需要のずれ、一様でない経済回復、そしてウイルスの影響だ。

我々は高インフレが家計に、とりわけ食料や交通など生活に必要な出費増に耐えるのが難しい世帯にとって困難だと理解している。我々のツールは供給制約を和らげることはできない。我々は経済の動きが不均衡を和らげ、物価上昇率も2%目標に近づくと確信している。

もっとも、長引く供給制約が物価上昇率に及ぼす影響を予測するのは難しい。グローバルな供給網は複雑で、通常の状態には戻るだろうが、その時期は極めて見通しづらい。もし物価上昇の道筋や、長期的な期待物価上昇率が実際に、長期にわたって我々の目標を超えるような兆候があれば、金融政策の構えを調整する用意がある。

資産購入は重要な施策であり続けた。パンデミック初期に金融安定性と市場機能を保つよう支えた。経済を支えるための緩和的な金融環境をつくった。20年12月の会合で、最大雇用と物価安定の目標へさらなる著しい進展がみられるまで、毎月1200億ドルのペースで資産購入を継続する意向を表明した。本日の会合で、経済がこの条件を満たしたと判断し、資産購入の減額を始めると決めた。

11月から、購入月額を米国債100億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)50億ドルの計150億ドルずつ減らす。経済が予想通り大きく進展するのであれば、毎月同じペースの減額が適切だとみている。それは22年の半ばにテーパリングを終えることを意味する。経済の見通しが変われば、このペースを修正する。我々がバランスシートの拡大を終えても、長期債の保有を増やしたことが緩和的な金融環境を支え続けるだろう。

本日のテーパリング開始の決定は金利に関して何の直接的な示唆を与えるものではない。我々は、政策金利を引き上げる前に満たすべき経済状況について、従来とは異なる厳しい評価を明確にしていく。

一問一答

利上げ時期、経済の先行き次第

――市場では22年に2回の利上げを予想しているが、見通しは。

「今回の会合はテーパリングを主眼においており、利上げではない。今は利上げする時期とは考えてはいない。雇用者数と労働参加率の両面において最大雇用に達しているとは言えない。供給制約は22年まで続き、物価上昇率を押し上げるだろう。パンデミックが収まれば供給制約が和らぎ、雇用も拡大し、物価も現在の高インフレの水準から下がるだろう。それは22年4~6月か7~9月とみる」

「利上げの時期は経済の先行き次第だ。辛抱強く待つことになるが、ためらうことはない。ビハインド・ザ・カーブ(景気拡大や物価の上昇に対して利上げが遅れる)の状況だとは思わない。金融政策は、(想定される)結果に対処するのに適切な立ち位置にある。我々は極めて透明性高くあるだろう。市場を驚かせたくはない」

――テーパリングは前回(13年発表、14年開始)の2倍以上のペースだが、その理由は。

「経済がかなり違うところにある。前回は最大雇用にはほど遠かったし、物価上昇率もずっと低かった。今の経済は需要が極めて強い。求人件数が、失業者の数を相当上回っている。さらなる景気刺激の必要性は13年時よりずっと少ない」

「FOMCの参加者は全会一致で、(テーパリングをする)条件が満たされたとみた。これは6カ月前に予測していたよりずっと早い。我々は状況が進み、明確になるにつれて政策を適応させる。その理由には、インフレが加速したこともある」

「最大雇用」、幅広い指標を考慮

――最大雇用は22年後半には実現するか。

「21年のような雇用情勢の改善が続けば、達成できると言えるだろう。幅広い指標を考慮する。失業率が低くても、(就労意欲はあるが求職活動をしていない)多くの人が労働市場を離れている状況は、失業者として数えられていないため実際には最大雇用とは言えない。労働参加率や賃金、州ごとの労働者の流出入など総合的にみて判断する」

「コロナ前の20年2月の雇用情勢を目標にしたくなるというのは理解できるが、コロナ以降の経済は未知の領域で、謙虚になるべきだ。失業給付の加算が終わり、学校が再開されればある程度の労働力が生まれると考えたが、そうはならなかった。退職者数、求人数、賃金など多くの指標が労働市場の逼迫ぶりを示している。問題はどの程度続くかだ。求人需要は非常に強く、賃金を押し上げている。最終的には判断の問題だが、物価安定と呼応する雇用水準が必要だろう」

「これ以上コロナの感染が拡大しないという状況になれば労働参加率などを含め労働市場の先行きが見えてくるだろう。22年前半にかけてコロナ後の経済の特徴が明らかになると期待する。進路はデータが導く。インフレ、供給制約の状況への理解が進むのに合わせて政策を適応させたし、今後も適切に対応していく」

モノの過剰な需要、サービス回復で緩和

――雇用最大と物価安定の2つの目標のバランスをどう取るか。

「リスク管理の問題で、あらゆる可能性に対応できる状態にしておくべきだ。現状でリスクは物価上昇の加速に偏っているようにみえる。忍耐強くあることも必要だ。デルタ型が広がり、今我々は(従来の想定とは)別の道筋をたどっているのだ。雇用創出が妨げられ、旅行にも出かけず、モノへ需要が過剰な経済となった」

「人々が旅行やサービスによりお金を使うようになれば、モノにお金を使わなくなり、インフレの緩和につながる。いくつかの分野でそうした兆候がみられるが、全体では改善していない。時間が経てばもっと見えてくるだろう」

インフレ「一時的」を巡って表現を変更

――物価上昇の打撃を受けている国民に、「物価上昇は一時的」というFRBのメッセージは届いているのか。賃金上昇との関係をどう見るか。

「現在の物価水準は安定という状況とは言えない。国民にはFRBの持つ手段を使って物価を安定させると強調したい。『一時的』という言葉は人によって解釈が異なる。我々にとって一時的とは、永久ではない、もしくは長期的にしつこいインフレが続くというものではないということだ。今回、我々は一歩後退し、『一時的と見込まれる』という表現に変えた」

賃金上昇、スパイラルの兆しない

「賃金上昇は、生活水準が何世代にもわたって向上するという点で好ましく重要だ。(物価上昇率を考慮した)実質賃金はそれほど伸びていない。懸念材料は、賃金上昇が長引き、物価上昇や生産性の向上スピードを上回り、企業の利益を圧迫し、その分価格転嫁しなければならない状況に陥ることだ。この賃金上昇スパイラルが起こる兆候はまだ出ておらず、状況を注視する」

「通常時でも景気を見通すのは難しい。グローバルな供給網の混乱となると別の次元の話で、パンデミックは前例のないことだ。(このような現状で)経済を予測し、政策を決めるのは非常に難しい。それでも我々は政策を決めなければならない」

――気候変動対応について、FRBは銀行による融資や投資の規制にどう関与していくのか。

「規制当局が決めることではなく、選挙で選ばれた人(議会)が決めることだ。気候変動に対して果たすべき役割はあると考えているが、我々の既存の任務は金融機関の健全性を保つ規制を課すことだ。金融システムの安定性の観点で、気候変動が経済に与える影響やリスクを理解することが、既存の任務でできることだろう。気候変動に関する国家戦略について、我々は決定権を持っていない」

(米州総局=大島有美子、伴百江、長沼亜紀、野村優子)

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