米国、23州で最低賃金引き上げ 840万人が恩恵

【ニューヨーク=弓真名】米国で最低賃金の引き上げが加速している。年末年始にかけて全米50州の半数近い23州が最低賃金を引き上げた。物価の上昇を考慮し各州が決めたもので、米シンクタンクは約840万人が賃上げの対象になると予想している。インフレに苦しむ生活者の一助になるとの見方がある一方、逆にインフレを長引かせる可能性もある。
中西部ミシガン州や西部アリゾナ州など計23州が最低賃金を引き上げた。上げ幅が最も大きかったのは中西部ネブラスカ州で、1.5ドル(約195円)引き上げ時給10.5ドルにした。東部ニューヨーク州はニューヨーク市など一部を除き最低賃金を時給14.2ドルに1ドル引き上げた。州単位での動きに加え、西部カリフォルニア州パロアルトなど27の都市と郡も一斉に賃上げした。
米労働省によると、2022年11月時点で米国の雇用者数(季節調整済み)は約1億5800万人だった。米シンクタンクのエコノミック・ポリシー・インスティチュート(EPI)は、今回の最低賃金の引き上げが雇用者数の約5%にあたる840万人に恩恵を与え、対象者の年収は累計で50億ドル以上増えると予想している。
米国では州単位で最低賃金の引き上げが広がる一方、連邦ベースの最低賃金は時給7.25ドルと09年から変わっていない。バイデン米大統領は連邦最低賃金を時給15ドルまで引き上げると公約に掲げたが、共和党からの反対が強く、新型コロナウイルスの経済対策に盛り込むことに失敗した。
最低賃金の引き上げが相次ぐ背景には、急激な物価の上昇が個人の生活を圧迫していることがある。22年、米国では消費者物価指数(CPI)の前年同月比の上昇率が約40年ぶりの高水準に達した。食品やサービス系の業種を中心に、賃上げや労働条件の改善を求めるストライキが急増。22年1~9月の発生件数は260件超と前年同期比で8割増えた。
22年11月のCPIは前年同月比7.1%上昇と、5カ月連続で伸びが鈍化した。ピークは過ぎたとの見方もあるが、最低賃金の引き上げがさらに広がれば、今後インフレ圧力になる可能性もある。