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米SECが新規則、「検査拒否」中国勢は24年上場廃止も

【ニューヨーク=宮本岳則】米証券取引委員会(SEC)は2日、米国に上場する外国企業向けの新規則をまとめた。当局による監査状況の検査を受け入れない場合、早ければ2024年にも上場廃止になる可能性がある。これまで検査を拒んできた中国企業を念頭に置いた措置だ。

米議会の諮問機関「米中経済安全保障再考委員会(USCC)」によると、米国に上場する中国企業は5月末時点で248社、時価総額は2.1兆ドル(約235兆円)に達する。電子商取引(EC)大手のアリババ集団や、ネット検索最大手の百度(バイドゥ)など有力企業も多く、米機関投資家から個人まで幅広く保有されている。実際に上場廃止手続きが始まれば、影響は大きい。

SEC傘下の上場企業会計監視委員会(PCAOB)は米上場企業を担当する監査法人を検査し、適切な会計監査が行われているか確認している。不正会計から投資家を守るのが狙いだ。ところが中国企業を担当する中国の監査法人については、中国政府が米当局による検査を拒んでいる。中国企業の米上場誘致に熱心な米金融界の後押しもあり、「検査拒否」でも上場が認められてきた。

SECの新規則では特例を認めない。20年12月18日以降に始まった事業年度で3期連続で検査を拒んだ場合、上場廃止になる。12月期決算企業であれば、早ければ24年にも米国で売買ができなくなる。中国企業が国内の規制を迂回して海外に上場する仕組み「変動持ち分事業体(VIE)」についても情報開示の強化が盛り込まれた。外国政府による経営所有権のレベルについても開示を求めた。

ゲンスラーSEC委員長は2日の声明で「歴史的に見て2つの国・地域は(PCAOBによる)検査を行っていない。それは中国と香港だ」と指摘した。一方、50以上の国と地域がPCAOBに協力しているという。新規則は米国に上場する全ての外国企業に適用されるが、事実上中国勢を狙い撃ちする内容になっている。

今回の新規則はトランプ前政権下の20年に成立した法律に基づいている。共和・民主両党の議員が上場ルールの厳格化を提案し、超党派の賛同を集めた。バイデン政権がこれを引き継ぎ、SECが最終規則化にこぎつけた。SECと中国の証券当局は水面下で協議を続けていたとされるが、妥協に至らなかった。米国内で、党派を問わず対中強硬路線への支持が広がっている証左といえる。

米議会やSECが上場ルールの厳格化にカジをきったのは、中国カフェチェーン大手のラッキンコーヒーの不正会計問題がきっかけだった。20年に売上高の水増しが発覚し、米ナスダック市場から退場を迫られた。米国の投資マネーが中国人民解放軍と関わりを持つハイテク企業の資金調達を支えることで、安全保障上の脅威が増すとの問題意識も広がっていた。

決定打は中国の配車アプリ大手、滴滴出行(ディディ)の株価急落問題だ。6月のニューヨーク上場直後に、中国政府が国家安全上の理由で同社に対する審査に入り、アプリの新規ダウンロードの停止を命じる事態となっていた。その後もIT(情報技術)企業や教育関連企業への規制強化によって株価が急落する場面があり、透明性の向上と投資家保護を求める声が高まった。

今後は中国当局の出方が焦点となる。滴滴出行は3日、米国での上場廃止と香港市場への新規上場を準備していると公表した。ブルームバーグ通信は11月下旬、中国当局が国外への情報流出を懸念し、滴滴出行に対して株式の非公開化か、上場先の変更を要求していると報じていた。

中国当局は滴滴出行以外の海外上場企業への締め付けも強めており、データ管理などの監督を強化する方針を示していた。米PCAOBは検査対象の監査法人に対し、監査済みの財務諸表や、そのベースとなる帳簿の閲覧を求めるため、中国当局が受け入れる可能性は低いとみられる。

アリババと百度はすでに米国と香港の重複上場を果たしている。上場予備軍は今後、主に中国本土や香港の取引所を目指すことになりそうだ。米国市場では実際、中国勢の新規上場が急減している。米中対立のエスカレートに歯止めがかかりにくくなる恐れがある。

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