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ガス管損傷、米欧はロシア関与断定回避 直接衝突恐れる

【ワシントン=坂口幸裕】ロシア産天然ガスをドイツに供給するパイプラインで見つかった損傷を巡り、米欧が原因究明に着手した。場所は北大西洋条約機構(NATO)に加盟するデンマーク近海だ。ロシアの攻撃による損傷だと断定されれば集団的自衛権に基づき、NATO加盟国が反撃するかどうかの議論が浮上しかねない。ロシア軍との直接対峙を避けたい米欧は慎重に判断する構えだ。

「重要インフラへのいかなる意図的な攻撃にもNATOは断固、結束して対処する」。NATOのストルテンベルグ事務総長は2日、米NBCテレビのインタビューで損傷がみつかった「ノルドストリーム」と「ノルドストリーム2」に関して「ロシアの仕業ならばNATOへの攻撃とみなすのか」と問われ、こう話した。

質問には直接答えず「いま重要なのは、何が起きたのか可能な限り把握し、全ての事実を明らかにするため進行中の調査を支援する」と語っただけだった。

NATOの根幹である北大西洋条約の第5条は「締約国への武力攻撃を全締約国への攻撃とみなすことに同意する」と記し、集団的自衛権の行使を定める。NATOに加盟する30カ国のうち、たとえ一つの加盟国が攻められただけでもNATO全体への攻撃と位置づけて共同対処するという内容だ。

計4カ所の損傷はデンマークやスウェーデンの排他的経済水域(EEZ)内で確認されたとみられている。デンマークはNATO加盟国で、スウェーデンは加盟申請した。ロシアの攻撃と断定すれば米国を含むNATO加盟国に防衛義務が生じ、ロシアとの戦闘につながる可能性が生じる。

米欧はロシアによる破壊工作を視野に調査を始めた。ロシア側は関与を否定しており、双方が非難の応酬を続ける。

バイデン米大統領は9月30日「意図的な破壊行為で、ロシアは噓を広めている」と批判した。地震など自然災害による破損ではないとの立場で「同盟国とともに真相究明を進めており、パイプラインの保護を強化する支援に着手した」と明かした。

サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は「NATOの同盟国の行為だとは考えていない」と発言。「ロシアが自分たちに責任があるときに『別の誰かがやった』と非難するさまを繰り返し見てきた」と指摘し、ロシアの加担を示唆した。一方、詳細は調査中だとも説明し、結論には言及しなかった。

米メディアによると、デンマークのフレデリクセン首相は損傷が発覚した直後「状況は深刻だ」と述べたが、場所が領海でない点を理由に、デンマークを狙った攻撃ではないとの認識を示した。ロシアとの戦闘に巻き込まれる事態を避けたい思いがにじむ。

ロシアは反論する。プーチン大統領は9月30日の演説で「アングロサクソン(の国)が爆破をしかけた」と決めつけた。タス通信によると、ロシアのパトルシェフ安全保障会議書記も「パイプラインの破壊で経済的に最も利益を得るのは(液化天然ガス=LNG=を輸出する)米国だ」と断じた。

損傷したパイプラインはロシア国営ガスプロムの関連会社が運営しており、自ら攻撃するのは理屈に合わないというのがロシア側の主張だ。

プーチン氏は最近、ウクライナ東・南部の4州をロシアに一方的に「併合」する条約に署名した。4州への攻撃はロシア領への攻撃とみなして核兵器の使用をちらつかせ、米欧やウクライナを威嚇する。パイプラインの破壊はウクライナを巡る緊張を高め、米欧を揺さぶりたいロシアによる自作自演だとの見方もくすぶる。

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