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従業員にワクチン、米企業奔走 Amazonやマクドナルド

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【ニューヨーク=山内菜穂子】米企業で従業員に新型コロナウイルスのワクチン接種を促す取り組みが広がっている。職場への復帰には接種が欠かせないが、義務付けは難しいとの認識があるためだ。職場での接種や有給休暇、奨励金の支給が中心で、接種後の体調不良への対応も課題になっている。

米ネット通販最大手のアマゾン・ドット・コムは、最前線で働く従業員が物流施設内などで接種できるように態勢を拡充している。3月下旬に3カ所で始まり、現在は米国とカナダの合計250カ所超に拡大した。50万人以上の従業員や取引先の従業員らが利用できるという。

ウォルト・ディズニーは1月半ばから保健当局と組んでディズニーランドの駐車場をワクチンの大規模接種場に変え、従業員や医療従事者や高齢者らなどの接種を進めた。マイクロソフトは4月、ワシントン州レッドモンドにある本社にワクチン接種会場を作った。予約のみで対応し、地域の住人など一般の人も接種できる。ロイター通信によるとアップルも4月、職場でのワクチン接種を始めると発表した。

米疾病対策センター(CDC)が3月に公表したガイドラインでは、職場での接種に適する企業の条件として従業員の出勤日が把握可能であること、予防接種プログラムに登録する能力があることなどを定める。企業はスクリーニング検査からワクチン接種後の経過観察までの一連の流れでソーシャルディスタンス(社会的距離)を保ち、保健所の指導を受けること、ワクチンを適切に保管することが必要となる。

接種時に有給休暇を使えるようにしたり、奨励金を支給したりする取り組みも広がる。米外食大手マクドナルドや米小売り大手のターゲットなどは接種で最大4時間の有給休暇を取得できる。食品スーパーのクローガーは100ドル(約1万1000円)を進呈する。

米小売り最大手のウォルマートは5月、接種証明を出した従業員に75ドルの支給を始めたほか、アマゾンも接種した新入社員に100ドルを配る。アリゾナ州立大が4月末に発表した調査では米国の雇用主の6割以上が接種を促す施策を計画していた。

米企業が接種の奨励に力を入れるのは、接種率の向上が安心できる職場環境に直結するためだ。米雇用機会均等委員会(EEOC)は5月28日、企業の要望を受け、雇用主は従業員に接種を要求できるとの指針を改めて示した。

一方で、EEOCは健康上の懸念や宗教上の理由などで接種しない従業員への配慮も求めている。さらに接種の奨励も「インセンティブが強制的に感じられるほど重大なものでない限り可能」と指摘した。従業員からの訴訟リスクなどへの懸念もあり、接種の義務化を打ち出す企業は少ない。

これらの奨励策は一定の効果があるとの調査結果も出ている。米カイザー・ファミリー財団(KFF)が5月に発表した調査によると、接種などで有給休暇が取得できる場合、未接種の従業員の28%が接種すると思うと回答した。200ドルの奨励金では26%、職場接種では20%が接種の意向を示した。

多くの企業が接種時の数時間の有給休暇制度を用意するが、接種後の体調不良への対応も課題になっている。KFFの調査では、未接種の人の半数が接種後の体調不良で仕事を休むことに懸念を持っていた。接種のために仕事を休むことへの懸念の2倍以上だった。

このため州政府や連邦政府は接種後の体調不良でも有給休暇がとれるように環境整備を急いでいる。バイデン政権は中小企業を対象に、税控除を活用して有給休暇が取れるように呼びかけている。東部ニューヨーク州のクオモ知事も5月末、接種後の体調不良でも有給休暇を取れるように新指針を作成する考えを示した。

CDCによると、12歳以上の人口のうち接種を完了した人は1日現在で48.5%に上る。積極的にワクチンを希望する人への接種がほぼ終わったとみられ、ワクチン接種ペースは鈍化している。

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