米国防長官、中国の台湾侵攻「差し迫っていない」

【ワシントン=坂口幸裕】オースティン米国防長官は2日放送の米CNNのインタビューで、中国による台湾への武力侵攻について「差し迫ってはいない」と述べた。8月上旬のペロシ米下院議長の訪台を利用して台湾海峡周辺で軍事活動を増大させていると指摘し「中国が新常態と呼ぶべきものを確立しようと動いている」と批判した。
ペロシ氏の訪台を受けた対抗措置として中国は国防当局の実務者会合などの対話停止を通告した。オースティン氏は対話が途絶えていると認めた上で「意思表示を続けるためにできる限りのことをする。中国がもう少し前向きになり、米国と協力してくれるのを望む」と話した。
中国軍の航空機が台湾海峡の事実上の停戦ライン「中間線」を越える数や時間が増大し、海域での活動も活発になっているとも強調した。日本などを念頭に「地域の同盟国やパートナーと協力し、自由で開かれたインド洋を維持するために必要なことを確実に実行し続ける」と語った。
米軍は8月下旬と9月中旬に台湾海峡で艦船を通過させた。国際法が認める航行の自由を重視し、中国による現状変更を認めない姿勢を示す狙いがある。オースティン氏は航行や飛行の自由を守る方針を堅持する方針を訴えた。
米国は中国本土と台湾が不可分だという中国の立場に異を唱えないものの、台湾の安全保障に関与する「一つの中国」政策を掲げる。一方、バイデン米大統領は中国が台湾を侵攻すれば米軍が関与すると繰り返し表明している。
オースティン氏は一つの中国政策は堅持する方針を重ねて示し「台湾が自衛力をつける支援を約束し、その作業は将来も継続される」と説明した。
米国は1979年制定の台湾関係法に基づき米国が台湾の自衛力維持を支援すると定め、武器売却を続けてきた。中国抑止とともに、台湾の一方的な独立も認めない現状維持が地域の安定に寄与するとの判断がある。
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