ウィル・スミスさん、米アカデミーを退会 平手打ち巡り

【シリコンバレー=佐藤浩実】3月に開かれた米アカデミー賞の授賞式でコメディアンのクリス・ロックさんを平手打ちした騒動について、俳優のウィル・スミスさんは1日、賞の主催団体である米映画芸術科学アカデミーを退会すると表明した。米メディアが一斉に伝えた。賞の多様化に貢献してきた映画人が団体を去ることになる。
米メディアへの声明で、スミスさんは「授賞式での私の行動は、衝撃的で、痛々しく、許しがたいものだった」と述べた。「アカデミーの信頼を裏切った。賞にノミネートされた他の人たちや受賞者から、彼らの素晴らしい仕事をたたえ、祝福される機会を奪ってしまった」とし、「心を痛めている」とつづった。「理性を失い暴力に走ることが二度とないように努める」と結んだ。
映画人で構成するアカデミーは1日、スミスさんからの「即時退会」の申し出を受理したと認めた。米メディアによれば、スミスさんは今後、アカデミー賞の候補作に投票する権利を失う。ノミネートの対象にはなるという。
アカデミーは3月30日に懲戒手続きを始めており、本人の意見を踏まえて4月半ばにも活動停止や除名といった具体的な処分を決める考えだった。スミスさんはその決定を待たずに退会意思を示した格好で、声明では「(アカデミーの)理事会が適切と考える、さらなる結論も受け入れる」とも述べた。
スミスさんは3月27日の授賞式で、賞の発表者を務めていたロックさんに歩み寄り、顔を平手でたたいた。脱毛症を患うスミスさんの妻ジェイダ・ピンケット・スミスさんの髪形をからかうような冗談をロックさんが口にしたことがきっかけだった。ロックさんは釈明したが、自席に戻ったスミスさんは放送禁止用語を使って「妻の名前を口にするな」と怒鳴り、会場は騒然となった。
その後、スミスさんは映画「ドリームプラン」で主演男優賞を受賞。壇上でのスピーチで「アカデミーに謝罪したい。ノミネートされた全ての仲間たちに謝りたい」と述べていた。翌日にはSNS(交流サイト)の「インスタグラム」でロックさんにも謝罪した。スミスさんの行動をめぐっては一部に擁護の声があるものの、映画関係者などから暴力を振るったことに対する批判が相次いでいた。