ブラジル10〜12月GDP、0.2%減 インフレが商業に打撃

【サンパウロ=宮本英威】ブラジル地理統計院(IBGE)が2日発表した2022年10〜12月期の実質国内総生産(GDP)は、前四半期比で0.2%減となった。前四半期比でマイナスとなるのは21年4〜6月期以来、6四半期ぶりだ。ロシアによるウクライナ侵攻に伴う物価上昇や、その抑制のための高金利で商業や製造業が打撃を受けた。
前年同期比では1.9%増と8四半期連続のプラス成長となった。ただ7〜9月期の実績(3.6%増)からは大幅に減速した。前四半期比でみた場合の分野別では、農牧畜業が0.3%増となる一方で、製造業が1.4%減、商業が0.9%減となった。
小売り大手ポンジアスカルは22年10〜12月期に11億200万レアル(約290億円)の最終赤字(前年同期は7億7700万レアルの黒字)を計上した。「食品の仕入れ値の上昇を販売価格にすべては転嫁できない」ことが響いている。
衣料品や雑貨の大手ヘネルは10〜12月期の既存店売上高が前年同期比で2.5%減少した。ダニエル・ドスサントス最高財務責任者(CFO)は「高インフレと債務で消費者の購買力が落ちている」と話す。
政策金利は13.75%と、世界で有数の高さだ。全国商業連合(CNC)によると、債務を抱えている世帯のうち返済が遅延していると回答した割合は1月に29.9%だった。10年以降の最多(30.3%)に近い水準で推移する。
1月に就任したルラ大統領は2月、「我々には経済成長が必要で、高金利はそのために適切ではない」などと高金利への不満をたびたび表明している。中央銀行によるインフレ抑制策に圧力をかけている。
これに対して中銀のカンポス・ネト総裁は、中銀の独立性が「非常に重要だ」と述べ、政府の圧力には屈しない考えを示している。
中銀は21年3月から12会合連続で利上げに動き、22年9月以降は4会合連続で金利を据え置いている。インフレ率は中銀目標の上限を上回る状態が続いており、当面は現行の水準での推移が続くとの見方が多い。
英調査会社キャピタル・エコノミクスは、23年1〜3月期のGDPが前四半期比でマイナスとなり、定義上の景気後退局面となる可能性を「半々」と分析している。同社で新興国分析を担当するチーフエコノミストのウィリアム・ジャクソン氏は「ルラ氏がより多くの社会的な支援策、中銀への利下げ圧力を増していく可能性がある」と指摘する。

2日発表の統計で、22年通年の実質経済成長率は2.9%だった。新型コロナウイルスの感染が深刻だった20年からの回復期だった21年(5%)からは減速したものの、堅調に推移した。
22年10月にあった大統領選に向けて、再選を目指していたボルソナロ前大統領が景気刺激策を実施した効果が大きい。低所得者層向けの現金給付の拡大や減税で消費が喚起されたが、需要の先取りが懸念されている。
中銀が民間エコノミストの予測をまとめて2月27日に公表した「FOCUS」では、23年の成長率は0.84%と見込まれている。