米メタの売上高4%減 10〜12月、株価は時間外で急騰

【シリコンバレー=奥平和行】米メタが1日に発表した2022年10〜12月期決算は、売上高が前年同期比4%減の321億6500万ドル(約4兆1500億円)、純利益が55%減の46億5200万ドルだった。減収は3四半期連続となる。景気減速や競争激化で主力のインターネット広告事業を取り巻く環境が厳しくなるなか、コスト削減を強化する考えを示した。
1株利益は1.76ドル(前年同期は3.67ドル)だった。減収が続いているが売上高は市場予想を上回り、1日の米株式市場の時間外取引で株価は一時、同日終値より19%超上昇した。同日に自社株買いの枠を400億ドル拡大すると発表したことやコスト管理を重視する考えを示したことも好感された。
SNS(交流サイト)のフェイスブックは12月、1日あたりの利用者が20億人に達した。1年前より4%多く、市場予想を上回った。画像共有アプリのインスタグラムなどを含むグループのサービス全体の月間利用者は4%多い37億4000万人だった。
ネット広告事業の売上高は312億5400万ドルとなり、前年同期より4%減った。景気減速に伴い企業が広告費を抑える傾向が強まり、関連企業への逆風となっている。スーザン・リー最高財務責任者(CFO)は同日の決算説明会で「テクノロジーや金融といった分野の広告の落ち込みが大きかった」と述べた。

中国発の動画アプリTikTok(ティックトック)が利用者を伸ばしていることも影を落としている。メタは「リールズ」と呼ぶ競合サービスを強化しており、マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は「リールズの収益化を進めており、年末か来年初めには既存サービスの落ち込みを補えるようになる」との見通しを示した。
同社は新型コロナウイルスの流行に伴ってサービスの利用が急増したことを受けて採用を拡大したが、22年11月に全社員の約13%に当たる1万1000人超を削減することを決めている。10〜12月期は人員削減やオフィスの統廃合、データセンター増設計画の見直しに伴い約42億ドルの費用を計上した。
ザッカーバーグ氏は「23年は効率化の年になる。人員削減は始まりにすぎない」と述べ、コスト削減を続ける方針を示した。23年の設備投資の見通しは340億〜370億ドルから300億〜330億ドルに引き下げた。「コスト効率の高い新たなデータセンターに移行するため、建設に関連する費用を見直して減額した」(リーCFO)としている。
旧フェイスブックは21年にメタに社名変更し、本業のネット広告の利益を臨場感が高い仮想空間、メタバースに関連したサービスの開発に投じる方針を示していた。ザッカーバーグ氏は1日、23年後半に消費者を対象とした新たな仮想現実(VR)端末を発売すると明らかにした。
ただ、メタバース関連は先行投資がかさみ、赤字が続いている。10〜12月期も売上高が前年同期比17%減の7億2700万ドルにとどまる一方、営業赤字は前年同期の33億400万ドルから42億7900万ドルに拡大した。
メタは事業環境が厳しくなってもメタバースを優先する方針を貫き、投資家が不満を募らせた経緯がある。22年に同社の株価は60%以上下落している。一方、1日はコスト削減や人工知能(AI)を活用した本業の強化を強調し、ザッカーバーグ氏が「優れたテック企業の創造と収益性向上を両立させる」と述べるなど、市場との融和姿勢を前面に押し出した。
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