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米、核使用の厳格化を検討 1月にも指針 同盟国は懸念

【ワシントン=中村亮】バイデン米政権が1月にも公表する核政策の新たな指針で、核兵器の使用条件を厳格にする案を検討していることがわかった。核兵器の使用を主に核攻撃への反撃と定める構想が浮上している。足元ではロシアが隣国ウクライナに軍事侵攻する可能性が取り沙汰されている。欧州諸国の一部は、厳格化で抑止力が低下しかねないとの懸念をバイデン政権に伝えた。

米政権は新たな指針である「核体制の見直し(NPR)」で、核軍縮に向けた具体策を示す。バイデン大統領は、同氏が副大統領として仕えたオバマ元大統領から「核なき世界」の理念を引き継いでいる。

NPRの焦点は核使用の条件変更だ。現在は「米国や同盟国、パートナーの死活的利益を守るため極限の状況においてのみ核兵器使用を検討する」と定義している。

核兵器と同様に大量破壊兵器とされる生物・化学兵器、大規模な通常兵器による攻撃に対し、核兵器で反撃する可能性を否定していない。サイバー攻撃に核兵器で報復できるとの見方もある。幅広いシナリオで核を使う余地を留保していると考えられている。

これを見直すうえで、バイデン政権は核使用の条件を最も厳しくするとされる「核先制不使用」の方針は採用しない方向で同盟国と調整に入った。NPRの検討状況を知る2人の関係者が明らかにした。

核先制不使用とは、核攻撃を受けた場合に限って核兵器を使うと公に約束し、明文化する方針だ。与党・民主党のリベラル派や核軍縮を訴える団体が採用を働きかけていた。

かわりにバイデン政権は「唯一の目的」と呼ばれる構想を検討している。唯一の目的とは、世界での核軍縮を巡る議論で使われる用語だ。一般的な解釈では、核保有の目的を敵からの核攻撃の抑止に絞るとされる。核使用は核攻撃への反撃とするといわれているが、決まった定義はなく裁量の余地が残る。

唯一の目的構想を採用すると、生物・化学兵器や大規模な通常兵器による攻撃への反撃に核兵器を使用することはいまよりも難しくなる。敵の核攻撃を事前に察知した場合、攻撃される前に核兵器を使って阻止することを許すとの解釈もあるが、核先制使用もかなり困難になりそうだ。

米民主党のアダム・スミス下院軍事委員長は唯一の目的構想が、核先制不使用と同じような効果を持つと指摘する。専門家は、核兵器を使う条件を明確にすることで、敵が「米国は核攻撃を準備している」と誤解し、その前に核攻撃を仕掛けてくるリスクを低減できるとみる。バイデン氏は2020年の大統領選で唯一の目的構想に支持を表明した。

一方、米国の同盟国は警戒する。米国が核使用の選択肢を狭めることで、ロシア、中国、北朝鮮への抑止力が低下する公算が大きいからだ。

アジアでは中国が軍事力を高め、米国との均衡に近づいている。米国防総省は中国の核弾頭保有数が30年には少なくとも1000発に達すると予測する。10年間で5倍になる。北朝鮮は核兵器だけでなく、生物・化学兵器も開発しているとの分析が目立つ。

欧州の外交当局者は「北大西洋条約機構(NATO)加盟国の大半が唯一の目的政策に賛同していない」と明かす。ロシアへの懸念が背景にある。この当局者は核政策をめぐる米国との2国間協議で、抑止力が低下するとの懸念を伝えたという。

米政権は、こうした同盟国の懸念に配慮し、唯一の目的政策をめぐり、核使用の条件に「生存に関わる脅威」への対処を加える案を同盟国に示した。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が報じた。核攻撃への反撃以外にも核兵器を使う可能性を残す案だが、使用条件が曖昧になればなるほど現在の政策との違いが分かりにくくなる。

米国も一枚岩でない。米軍は核使用の選択肢をできるだけ残したい考えだ。米国はロシアが同国西部のウクライナとの国境付近に兵力を集め、侵攻する可能性があると表明している。このタイミングで核兵器の「価値」を大きく下げる方針を打ち出せば、米国の内外から「ロシアに弱腰だ」と批判を浴びかねない。

バイデン政権は、唯一の目的構想の是非を慎重に見極める構えだ。

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