NY連銀総裁「与信環境悪化、企業・家計の支出減らす」

【ニューヨーク=斉藤雄太】ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は31日の講演で、米銀シリコンバレーバンク(SVB)の破綻による米経済への影響について「与信環境の引き締めを招き、企業や家計の支出の減少につながる可能性がある」と語った。今後の金融政策判断で「与信環境の変化が経済成長・雇用・インフレの見通しに与える影響に特に焦点をあてる」と述べた。
SVBや米銀シグネチャー・バンクの破綻を受け、一部の中堅・中小銀行では預金の流出が加速した。銀行が投融資に慎重な姿勢を強めることで経済活動が鈍化するとの見方が出ている。ウィリアムズ氏の発言もこうした懸念を示したものだ。与信環境悪化の「影響の大きさや持続期間はなお不確実だ」とも指摘し、「政策決定はデータと、最大雇用と物価安定という任務に従って下される」とした。
質疑応答では2008年のリーマン危機と今回は「多くの点で異なる」とも強調した。テック企業やベンチャーキャピタルの大口預金が集中するなどSVBが特殊な環境に置かれていたと説明。「米国の銀行システムは非常に健全で強靱(きょうじん)だ」と訴えた。
経済・物価情勢では「インフレが依然として最大の懸念事項だ」と述べた。賃金の高止まりを念頭に、住宅分野を除くサービス価格の引き下げに「最も長い時間がかかるだろう」と指摘した。物価上昇率は年内に3.25%程度まで鈍るものの、2%目標に近づくまでは2年間かかるとみる。金融引き締めの影響で、足元で3.6%の失業率は24年にかけて4.5%まで上昇すると見込む。

米テクノロジー企業への融資で知られ、米西海岸シリコンバレーのエコシステムの中核を担ってきたシリコンバレーバンク(SVB)が2023年3月10日、経営破綻し、米連邦預金保険公社(FDIC)の管理下に入りました。関連する記事をお読みいただけます。
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