香港GDP、2022年は3.5%減 人材流出が深刻

【香港=木原雄士】香港政府は1日、2022年の実質域内総生産(GDP)の伸び率(成長率)が速報値で前年比マイナス3.5%だったと発表した。新型コロナウイルス対策の規制で個人消費や輸出がふるわなかった。22年までの4年のうち3年がマイナス成長となった。グローバル化の恩恵がしぼみ、深刻な人材流出に直面している。
GDPの内訳は民間消費支出が1.1%減、設備投資をはじめとする固定資本形成は8.5%減だった。GDPのほかにも経済指標の悪化が目立つ。政府が算出する住宅価格指数は22年12月、前年同月より16%下がった。通年の下落はリーマン・ショックの08年以来14年ぶり。22年12月の輸出は同29%減で、約68年ぶりの大きな落ち込みになった。
香港の経済環境は10年ぶりのマイナス成長を記録した19年から厳しい状況が続く。同年には大規模な民主化デモがあった。20年には新型コロナの感染拡大にくわえ、香港国家安全維持法(国安法)が施行された。厳しい新型コロナ対策と政治情勢の変化が重なり、中国本土と世界をつなぐ香港のハブ機能は損なわれた。

深刻なのが専門人材の香港離れだ。日本貿易振興機構(ジェトロ)などが1月に実施した香港の日系企業向け調査では、56%が過去1年間で「人材流出があった」と回答した。38%は香港外への流出を経験した。
中国式の「愛国教育」を嫌う子育て世帯が海外に移住し、強みだった人材の蓄積が薄くなっている。人材流出があったと答えた日系企業の38%は代わりの人員を確保できていない。
競争力低下を危惧する香港政府は大がかりな広告宣伝キャンペーンを始める。すでに有力経済人らが参加する特別チームを発足させた。欧米との関係悪化を踏まえ、東南アジアや中東とのパイプづくりも急ぐ。李家超(ジョン・リー)行政長官は4日から経済人ら約30人を伴いサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)を訪問する。
李氏は中東訪問によって中国の広域経済圏構想「一帯一路」を強化したいと語った。豊富な石油マネーを中国に呼び込む役割を目指す。
香港は長く欧米企業の中国ビジネスの拠点だった。だが、李氏自身が米国から制裁を受けるなど、欧米との関係改善は当面、望みにくい。香港の不動産大手、恒隆地産の陳啓宗会長は「香港はグローバル化の大きな恩恵を受けてきたが、それが逆回転するのならば、役割を修正しなければならない」と話す。
明るい兆しもある。スタンダードチャータードの劉健恒シニアエコノミストは「中国本土との往来再開が香港の成長率を押し上げる。1〜2年で新型コロナの感染拡大前の水準に戻るだろう」と指摘。政府報道官も1日「23年は経済が回復する」との見方を示した。

3期目となる新たな習近平(シー・ジンピン)指導部が発足しました。習政権では習氏に近いとされる「習派」は最高指導部を指す政治局常務委員で7人中6人を占め、序列24位以内の政治局員でも約7割が該当するとみられます。権力の一極集中を進める習政権の最新ニュースや解説をまとめました。
■「習政権ウオッチ」習政権の中枢で何が起きているのか。中沢克二編集委員が深掘りします。
■「大中国の時代」異形の膨張を続ける「大中国」の轍(わだち)と、習氏のビジョンを読み解きます