ソウル・梨泰院の雑踏事故、外国人犠牲者は14カ国計26人

【ソウル=細川幸太郎】韓国ソウルの繁華街、梨泰院(イテウォン)で10月29日夜に起きた雑踏事故で、154人の犠牲者には外国人が26人含まれていた。日本の2人のほか、イラン5人、中国4人、ロシア4人、米国2人など14カ国からの渡航者が犠牲となった。梨泰院のそばには在韓米軍の基地があり、国際色豊かな街だったことが外国人被害の拡大につながった。
韓国政府によると、外国人の犠牲者の国籍はほかにフランス、ノルウェー、オーストリア、オーストラリア、ベトナム、タイ、スリランカなど。
梨泰院はソウル中心部の龍山(ヨンサン)区にある。クラブやバーなどのナイトスポットが多く、世界各国のレストランが立ち並ぶ。普段から外国人の往来が目立つ。今回の事故は、飲食店がひしめく「世界飲食文化通り」と地下鉄駅のある大通りを結ぶ幅3~4メートルの緩やかな坂の路地で起こった。
キリスト教系の教会やイスラム教のモスク(礼拝所)もあり、外国人居住者も多い。
梨泰院が世界で知られるようになったのは2020年放送の人気ドラマ「梨泰院クラス」だ。米ネットフリックスの会員数増の波に乗り、世界に配信された。
ドラマの序盤で、主人公がハロウィーンでにぎわう梨泰院の様子を見て、この街で飲食店を開くことを決める重要な場面がある。この10分間ほどのシーンは事故現場の近くで撮影された。梨泰院は多様な人種、文化が入り交じる街として描かれた。
新型コロナウイルス対策の営業制限が完全になくなり、飲食店やクラブは3年ぶりの大規模なハロウィーンイベントを開催。ドラマで描かれたような雰囲気を味わいたいと、韓国人だけでなく、多くの外国人も梨泰院に集まったとみられている。
事故を受け、各国首脳の哀悼の意が相次いだ。
バイデン米大統領は声明で米韓同盟に触れ「米国は韓国とともに立ち上がる」と連帯を強調した。ロシアのプーチン大統領も韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に「深い哀悼」を示す弔電を送り「一日も早い(負傷者の)回復を祈る」と伝えた。
中国国営の新華社によると、同国の習近平(シー・ジンピン)国家主席も尹氏に弔意を示すメッセージを送った。中国人も死傷しており、韓国側に治療や対応への尽力を求めた。
米欧メディアは被害が拡大した要因を追及した。
英BBCは現地に居合わせた人々が手分けして被害者に心臓マッサージを施したが、大半がすでに呼吸をしておらず「何もできなかった」との証言を伝えた。「安全基準や混雑対策に関心が集まるだろう」と報じた。
米CNNは、駆けつけた警察官を仮装と勘違いする人がいたこと、市民が普段から地下鉄などで混雑に慣れていることも、被害が拡大する一因になったとの見方を紹介した。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは「群衆に対する当局の規制が疑問視されている」と論評した。