中国、3人目の出産も容認 少子高齢化加速に危機感
【北京=川手伊織】中国共産党は31日の政治局会議で、1組の夫婦に3人目の出産を認める方針を示した。2020年の出生数は1949年の中国建国後最大の落ち込みとなった。中国にとって巨大な人口は国際的な影響力の源泉だ。少子高齢化による経済成長鈍化などへの危機感は強く、産児制限の緩和に動く。
国営新華社が報じた。中国は1980年ごろから夫婦に1人の出産しか認めない一人っ子政策を始めた。強制的な出産抑制で出生率は下がり、16年にすべての夫婦に2人目の出産を認めたが、産児制限をさらに緩める。
20年の国勢調査によると、14億人超の人口はなお増加したが、減少への転換は間近だ。中国共産党系メディアの環球時報は人口統計学者の見方として「22年にも総人口は減少に転じる」と伝えた。従来の見通しより5年ほど前倒しになる可能性がある。

少子高齢化は急速に進んでいる。65歳以上の高齢者は20年までの10年間で6割増えた。人口に占める割合も13.5%に達し、国際基準で同14%超と定める「高齢社会」に間もなく突入する。
対照的に、働き手や子どもの数は減少に歯止めがかかっていない。生産年齢人口は13年のピークから4%落ち込んだ。1人の高齢者を支える現役世代の数は減り続ける。
社会保障をめぐる財政へのしわ寄せも拡大している。年金や医療、労災、失業、出産保険の収支を管理する社会保険基金の21年予算は、25.5%を財政支出で補う。15年から3ポイント上昇した。
20年までに携帯電話の出荷台数は4年連続、新車は3年連続で減った。若い世代が減り、習近平(シー・ジンピン)指導部が重視する内需拡大にも影を落とす。中国人民銀行(中央銀行)は4月のワーキングペーパーで「高齢化の危機を技術進歩や教育水準の向上で補うことは難しい」と結論づけた。人口問題への早急な対応を求めていた。
働き手を確保するため、政治局会議は「法定退職年齢の引き上げを着実に進める」とも強調した。年金支給開始年齢の引き上げや若年雇用も絡み、庶民の反発も強い。年金など社会保障の充実とともに複雑な問題だ。
16年の二人っ子政策は効果が長続きしなかった。出生数は17年以降4年連続で減った。とくに20年は1200万人と前年比18%の大幅減だった。人数も多数の餓死者を出した大躍進政策の影響が残っていた1961年以来の少なさとなった。
子育て支援策として、都市部で不足する預かり保育のサービスを充実させるほか、高騰する教育コストの削減にも取り組む。女性が出産しやすい環境をつくるため、出産休暇や関連の保険制度を整備するとした。
中国では婚姻の減少も少子化に拍車をかけてきた。2020年まで7年連続で減少した。政治局会議は「結婚適齢期の青年が持つ結婚観、恋愛観、家庭観に対する教育指導を強める」と強調した。過剰な結納など行き過ぎた社会風習を是正するとした。
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