/

中国、景気回復も不良債権が重荷 大手銀22%増

中国農業銀行など4大銀の不良債権比率は上昇した=ロイター

【香港=木原雄士、北京=川手伊織】中国景気が復調するなか、金融機関の不良債権が再び増え始めている。中国工商銀行など四大国有銀行の2020年末の残高は前年末に比べ22%増えた。零細企業には景気回復の恩恵が行き渡っておらず、新型コロナウイルス対策に伴う返済猶予措置が終われば、不良債権はさらに膨らむおそれもある。

4行は景気回復の追い風を受け、20年12月期決算でそろって増益を確保した。資産規模が世界最大の工商銀の純利益は通年で1.4%増にとどまったものの、10~12月期に限ると前年同期比44%増だった。

一方で、不良債権残高は4行合計で9991億元(約16兆6000億円)となり、1年間で1810億元増えた。不良債権比率は平均1.54%と、19年末を0.14ポイント上回った。ここ数年は比率が低下してきたが、4年ぶりに上昇に転じた。

中国農業銀行の張旭光・副行長はオンライン会見で「主に製造や卸売り、小売り、サービスなどの分野で不良債権が発生した」と述べた。4行合計の貸倒損失は前の期に比べて16%増え、利益の下押し要因になった。

中国は主要国の中で新型コロナ抑え込みに成功しているとされる。ただ、経済正常化は不動産やインフラなど固定資産投資や輸出がけん引役となり、零細企業に恩恵が及びにくい。20年12月~21年2月を中心とした局所的な新型コロナ感染拡大は消費の持ち直しに水を差し、街角の飲食店など零細企業の経営に打撃を与えた。

工商銀の王景武・副行長は「景気回復が続くため、資産劣化のリスクは管理可能な範囲だ」と話すが、先行きに慎重な意見が多い。米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは「経済の不確実性が残り、資産のリスクは依然として高い」と指摘する。とりわけ規模が小さい零細企業の経営環境はなお厳しい。

中国政府も政策で下支えする。国務院(政府)常務会議は零細企業の元利返済猶予を21年末まで延ばすと決めた。対象は1000万元以内の与信で、もともとは21年3月末が期限だった。増値税(付加価値税)がかからない対象も広げ、零細企業などの税負担を軽減する。これ以上の零細企業の経営悪化を防ぎ、不良債権問題を深刻化させたくないとの意向がうかがえる。

ただ中国銀行の劉金・行長は「企業を取り巻く基本的な状況は変わっていない」と語る。「今年末に猶予措置が終了すれば、返済に行き詰まる企業が出てくる」と警戒感を示している。

フィッチ・レーティングスによると、中国で20年に返済猶予などの救済措置を受けた融資総額は7兆3000億元に上り、零細企業向けに限ると全体の17%に達する。規模の小さな農村商業銀行の20年末の不良債権比率は19年末比わずかに低下したが、不良債権の予備軍は多い。

日本総合研究所の関辰一・主任研究員は「借り手企業のデータ分析などから、実際の不良債権額は各行の開示よりも大きい」と分析する。「新型コロナで家計の債務もハイペースで増えており、不動産価格が下がると影響が大きい」という。

四大銀の総資産は足元で113兆元(約1900兆円)を超え、この5年で1.5倍に膨らんだ。新型コロナ対応を名目に問題先への融資が膨らめば、金融システムのリスクになる。英フィナンシャル・タイムズによると、中国人民銀行(中央銀行)は国内銀行などに1~3月期の新規融資を前年並みに抑えるよう指示した。

春割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

関連企業・業界

業界:

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で申し込むログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で申し込むログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で申し込むログイン