/

シンガポール、ギグワーカーの保護策を導入へ 

【シンガポール=中野貴司】シンガポール政府はネットを介して単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」の保護策を導入する。正社員に比べて収入や福利厚生が劣る点が問題視されており、傷害保険の義務付けなどが検討の対象になる見通しだ。配車サービスや料理宅配を手掛けるグラブなど企業にとっては関連コストが増加し、収支が悪化する要因となる。

リー・シェンロン首相は29日の国民向け演説で「低賃金労働者、特に宅配の運転手の過酷な労働環境を懸念している」と発言した。グラブやドイツ系のフードパンダ、英デリバルーといった料理宅配大手の企業名を挙げ、ノルマに追われる運転手の映像を紹介した。そのうえで「運転手は職場でけがをした際の補償など、正社員が享受する基本的な保護を受けていない」と指摘した。

29日の演説は首相が毎年8月に実施する最重要の演説で、今年はギグワーカーを含む低賃金労働者の環境改善が主要テーマの一つとなった。演説を受け、人材開発省が近く具体策を提言する見通しだ。シンガポール経営大学のユージン・タン准教授は「けがの補償の義務付けや雇用者からの積み立て年金への拠出などが検討される」とみる。

大手企業は政府との協議に応じる意思を示す。

グラブは「この2年間、自主的に運転手向けの傷害保険の補償額を引き上げてきたが、政府や関係者と今後も協議していく」とのコメントを発表した。シンガポールで約9000人の運転手と契約するデリバルーも「運転手の福利厚生の充実には常に取り組んでいる。新たな方策も前向きに検討する」としている。

大手企業が政府の方針を受け、運転手向けの福利厚生を拡充すればコスト増の要因になる。収支の悪化を避けるため、顧客の手数料を引き上げる可能性もある。

定職を持たない若年層も多い東南アジアでは、ギグワーカーが柔軟な働き方を実現し、所得を底上げする雇用形態として評価されてきた面があった。グラブなども新たな雇用形態が生まれたことによる労働者の生活改善の利点を強調してきた。

ただ、平均所得が高いシンガポールでは、配車や食事の宅配だけでは十分な所得が得られない負の側面への社会の関心が高まっている。

世界的にもギグワーカーの処遇改善は大きな課題となっている。英国の最高裁判所は2月、米配車大手ウーバーテクノロジーズの運転手は従業員だと認定した。ウーバーは3月、英国の約7万人の運転手を「労働者」として扱い、最低賃金を保証すると発表した。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン