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中国、工事停止の住宅に金融支援 4兆円で早期竣工促す

【北京=川手伊織】中国政府は住宅市場の混乱を解消するため、金融支援に乗り出す。不動産開発企業の資金不足で工事が止まったマンションの完成を促すため、政策銀行が2000億元(約4兆1000億円)の融資枠を設けた。各地で購入者が引き渡しの遅れに抗議し、住宅ローンの返済拒否を表明している。政府は住宅不況が金融不安に発展しかねないとの警戒から対応を急ぐ。

中国住宅都市農村建設省や中国人民銀行(中央銀行)がこのほど、金融支援の方針を打ち出した。中国メディアの財新によると、当面の資金規模は2000億元に上る。人民銀行の指導のもとで政策銀行の中国国家開発銀行と中国農業発展銀行が貸し出す。

資金の使い道は、分譲済みだが工事の遅れや停止で引き渡しができていないマンションの早期竣工に限る。政府関係者も「金融支援は不動産市場の刺激や開発企業の救済に使うものではない」と強調する。

未完成物件の早期完成を急がせるのは、問題を放置すると金融不安に飛び火しかねないとの懸念があるためだ。

バブルを抑制するため昨年から強めた不動産規制の影響で、開発企業は深刻な資金繰り難に陥った。このため建設が中断する未完成の物件が相次いだ。不動産シンクタンクの易居不動産研究院は、2022年6月までの4年間に販売された新築物件の4%近くが問題物件だと試算する。

中国では面積ベースで9割のマンションが竣工前に販売される。居住前から住宅ローンの支払いが始まる人も多い。引き渡しの遅れが社会問題となり、購入者が抗議のため住宅ローンの返済拒否という強硬手段に訴え始めた。7月に拡大し、全国で340カ所超の開発案件に広がった。

易居は不動産融資残高の1.7%にあたる9000億元に影響が及ぶとはじく。中国政府系の国家金融発展実験室も「住宅ローン返済拒否の問題を未解決のままにしておくと、不動産業界全体が停滞状態に陥る」と警告する。

住宅市場が混乱した影響はすでに新築販売の落ち込みという形で表れている。中国国家統計局によると、7月の販売面積は前年同月比3割減と、6月からマイナス幅が拡大した。易居が調べた主要100都市の取引面積によると、8月も3割超下回った。

政策銀行の資金は地方政府が借り入れる。地域の問題物件の竣工に必要な資金規模などを評価して、まとめて申請する。資金不足に苦しむ開発企業でなく、地方政府に返済義務を負わせることで、融資の焦げ付きリスクを少しでも抑える狙いがありそうだ。

習近平(シー・ジンピン)指導部は、未完成物件が続出した問題をめぐり、地方政府が引き渡しまでの責任を果たすよう指示している。地方政府の中には、独自の対応策で問題の解決を急ぐ動きもある。

住宅ローン返済拒否の問題案件の1割超が集中する河南省鄭州市は、独自に100億元の基金を創設した。国有企業なども資金を拠出する。さらに6日付で、工事が止まったすべての問題物件について、10月6日までに建設を再開させる方針を打ち出し、開発企業に通知した。広西チワン族自治区南寧市も同様の基金を設けた。

北京市や安徽省合肥市はマンションが完成してからの販売を促す。新たな土地の使用権を開発企業に売る入札において、一部の土地に「竣工後の販売」を条件に付けた。未完成物件の発生を未然に防ぐ狙いと言える。

ただ開発企業にとって、完成後の販売は竣工前の分譲に比べて資金回収までの時間が長期化する。資金不足から抜け出せないなか、「竣工後の販売」という条件が付いた土地に、どれだけの需要が集まるかは不透明だ。

中国では住宅市場の低迷が長引いていることで、マンションに対する値上がり期待は薄れている。初めて住宅を買う人が多いとされる25~34歳の人口も減少が続く。未完成物件における住宅ローンの返済拒否という問題が解消しても、マンション市場が好転するには時間がかかりそうだ。

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