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北朝鮮、寧辺核施設を再稼働か IAEAが報告書

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寧辺の核関連施設を捉えた衛星写真 =Planet Labs Inc. ・ AP

【ソウル=恩地洋介、ワシントン=中村亮】北朝鮮が北西部にある寧辺(ニョンビョン)の核施設で、7月初めから原子炉を再稼働させた兆候のあることが、国際原子力機関(IAEA)の報告書で明らかになった。2018年に当時のトランプ米政権と対話を始めて以降、中断していた核開発を再開した可能性がある。

報告書は衛星写真などをもとに、北朝鮮による最近の核開発状況を分析した。IAEAは今回の報告書を基に9月13日から始まる理事会と、同20日から始まる総会で北朝鮮問題を議論する。

寧辺は、原子炉や研究施設、核燃料工場などが集積しており、核開発の心臓部と呼ばれる場所だ。報告書は、冷却水の排出など黒鉛減速炉が稼働した兆候を観測したと指摘した。18年12月から今年7月初旬までの約2年半の間には、こうした兆候は確認されなかったという。

寧辺の黒鉛減速炉は5千キロワットの出力があり、過去の核実験で使ったプルトニウムはここで生産されたとみられている。原子炉から取り出した使用済みの核燃料棒を再処理することでプルトニウムを抽出できる。

報告書によると、使用済み核燃料の再処理施設に蒸気を供給するプラントも2月から7月にかけて5カ月間稼働した。過去の事例と比較すると、5カ月の間にプルトニウムが再び抽出された可能性も排除できないという。

ウラン濃縮施設があると推定される平壌近郊の「カンソン」でも、建設作業が続くなどの動きが捕捉された。

報告書は、黒鉛減速炉と再処理施設の稼働の兆候を「深刻な問題だ」と強調した。核計画の放棄を求める国連安全保障理事会の決議に違反すると指摘している。

米国や韓国の当局は、北朝鮮がすでに20~60発の核兵器や、核兵器を製造可能なプルトニウムを50キログラム程度保有していると見積もっている。北朝鮮はさらなる核戦力の拡大をテコに、米国や国際社会の関心をひき付けたい考えとみられる。

北朝鮮は過去に寧辺核施設の稼働と中断を繰り返し、米国や周辺国との交渉カードとして利用した。07年の6カ国協議では、3つの核施設を無能力化させることで合意。08年に黒鉛減速炉の冷却塔を爆破したが、核心部分には手をつけず、13年に原子炉の再稼働を宣言した。

トランプ政権下の18年に始まった米朝交渉では、金正恩(キム・ジョンウン)総書記が寧辺を交渉の切り札に使おうとした。

19年2月にベトナムのハノイで開いた2回目の米朝首脳会談で、金正恩氏は経済制裁の解除と引き換えに寧辺核施設を廃棄すると提案した。トランプ氏が他の核施設も廃棄するよう求めたため、会談は決裂した。

バイデン政権は北朝鮮に「前提条件なしの対話」を呼びかけている。先に韓国を訪れたソン・キム北朝鮮担当特使は「いつでもどこでも北朝鮮側と会う準備ができている」と語り、交渉復帰を促した。

ただ、北朝鮮指導部はバイデン政権への不信感をあらわにしている。「戦略的忍耐」を唱え、北朝鮮を事実上無視したオバマ政権の政策を継承していると疑っているためだ。接触には応じない姿勢を示す。

金正恩氏は年明けの朝鮮労働党大会で、核を増強する路線への回帰を表明した。北朝鮮外務省はホームページに掲載した今月28日付の記事でも「最強の戦争抑止力を不断に備蓄していく」と主張。米韓合同軍事演習の実施を理由に「国家防衛力と先制打撃能力を強化する必要性を痛感した」などと核・ミサイル開発を正当化した。

寧辺の再稼働は、今後の非核化交渉を見据え、バイデン政権に向けて核開発の意思を誇示するためとの見方が強い。韓国・北韓大学院大学の梁茂進教授は「寧辺が引き続き有効な交渉カードであることを対外的にアピールする狙い」と分析している。

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