サムスン、最先端半導体の量産発表 「世界初の3ナノ」

【ソウル=細川幸太郎】韓国サムスン電子は30日、次世代の先端半導体の量産を始めたと発表した。半導体の性能を左右する回路線幅は3ナノ(ナノは10億分の1)メートルで、「世界初の技術」(同社)としている。サムスンは先端技術の開発を急いで、半導体の受託生産分野で世界首位の台湾積体電路製造(TSMC)を追う。
サムスンは「ゲートオールアラウンド(GAA)」と呼ぶチップ構造を初めて採用。微細回路での電流を効率的に制御でき、量産中の5ナノ半導体と比べて電力消費を45%抑え、チップ面積も16%小型化できるという。
サムスンが半導体研究所を持つ華城キャンパスで量産を始めた。まずは高性能コンピューターに使われ、今後はスマートフォン向け演算半導体にも適用していくという。3ナノの最先端半導体の顧客名は明かさなかった。
ライバルのTSMCは今年後半に3ナノ半導体を量産する計画を持つ。ただ、半導体業界では回路線幅の測定方法は企業によって異なるために単純比較はできないとの認識が一般的。サムスンの「世界初の技術」がTSMCより先行したとは言えないのが実態だ。
足元で半導体受託生産の分野で両社の格差は大きい。台湾の調査会社トレンドフォースによると、2022年1~3月期のTSMCのシェアは53.6%と、2位サムスンの16.3%を引き離す。サムスンは5ナノ半導体で量産開始から歩留まり(良品率)を軌道に乗せるのに時間がかかった経緯があり、同社の「3ナノ量産」への評価には慎重な見方もある。