/

中国、住宅投機を締め付け 中古価格に当局が介入

(更新)
北京市郊外の新築マンション

【北京=川手伊織】中国当局がマンション取引の規制を強める。主要都市で住宅購入に資格制を設けたり、中古物件の売買価格に当局が介入したりしている。不動産高騰への社会の不満が強いためで、今後3年で投機や違法取引を抑え込む方針だ。

中国の不動産市場は、新型コロナウイルス対応の金融緩和であふれたマネーが流れ込んできた。政府は住宅ローンの総量規制などを導入したが、大都市を中心に価格上昇の勢いは衰えていない。

取引価格が比較的自由で市場の需給を反映しやすい中古物件で値上がりは明らかだ。「1級都市」と呼ばれる北京、上海、広州、深圳の平均価格は6月、前年同月比10.5%上がった。新型コロナ前の2019年は2%以下で上昇が鮮明だ。

省都級やそれ以下の都市でも投機的な動きがみられる。中国住宅都市農村建設省は7月29日、物件価格が同10%ほど上昇した寧夏回族自治区銀川市や江蘇省徐州市など5市の政府責任者を呼び、不動産投機への対策を強めるよう指示した。

中国共産党は7月末の中央政治局会議で決めた21年下半期の経済運営方針に「不動産価格を安定させる」と盛った。これまでの経済運営方針にはなかった表現で、当局が価格に直接介入することも辞さない姿勢を示したとみられる。

実際、広東省東莞市と浙江省金華市は8月2日、中古マンションの参考価格をつくると発表した。仲介業者に参考価格とかけ離れた高額物件を紹介しないよう求める。広東省深圳市など少なくとも7都市も同様の措置をとる。

湖北省武漢市は住宅購入に資格制を導入する方針だ。購入希望者に当局への事前申請を義務付け、条件を満たした人のみに60日以内の購入を認める。買った不動産の登記が済んだら資格を凍結し、新たなマンションを買えないようにする。

市場ではなく当局が事実上の価格を決めるのは計画経済的な手法といえる。購入資格制は改革開放以前のコメなどの配給制をほうふつとさせると話題になった。インターネット上では「計画経済時代のような規制の厳しさだ」との声も上がる。

購入制限をすり抜ける脱法行為を防ぐ取り組みもある。上海市は7月、持ち主が所有するマンションを贈与しても、5年間は元の持ち主の所有物件とみなすと発表した。

中国では2軒目の購入には銀行で住宅ローンが組みにくくなるなど様々な制限がある。1軒目を見かけだけ贈与して規制をすり抜け、本当は2軒目なのに「1軒目」として買う人が少なくない。

不動産シンクタンクの易居不動産研究院によると、売り手が実際の売買を贈与に見せかけて個人所得税の納付を逃れる例もある。贈与規制はこうした脱税行為を防ぐ狙いもありそうだ。

住宅都市農村建設省や国家発展改革委員会などは7月、「今後3年前後で不動産市場の秩序を改善させる」と打ち出した。取り締まるべき重点課題として、設計図に基づかない違法な建築や不動産仲介業者による家賃や手数料のピンハネも挙げた。

価格高騰や不動産取引の脱法行為に、大都市でマイホームを持たない地方出身者らは不満を募らせる。住宅購入をあきらめて働く意欲もなくなった「寝そべり族」の出現も不満の一つの表れといえる。当局は3年後には「庶民の陳情や苦情を大幅に減らす」ことも目標に掲げた。

22年秋には最高指導部の人事を決める5年に1度の共産党大会がある。庶民の不満が爆発して社会不安になれば権力闘争の材料になりかねず、当局は細心の注意を払って不動産問題を処理する構えとみられる。

もっとも習近平(シー・ジンピン)指導部は19年12月に感染が広がった新型コロナからの景気回復を最優先し、副作用に目をつぶって20年春ごろから不動産取引の規制をひそかにゆるめてきた。20年の経済正常化は不動産開発が一つの原動力だった。

中国で不動産は俗に「経済のへそくり」と呼ばれる。関連産業も含めると国内総生産の2~3割を占めるとの見方があり、国や地方が税収なしでできる景気の「調整弁」として機能してきた。景気が悪くなれば取引規制をゆるめ、過熱すれば規制を強める。

19年7月の政治局会議は「不動産を短期の経済刺激の手段として用いない」と決めたが、新型コロナでわずか半年でほごにされた。今回の異例の規制は、不動産頼みの経済運営から脱しきれない習指導部の苦しさも映し出している。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連企業・業界

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン