キャピタルA、航空事業統合へ 上場廃止の回避目指す

【シンガポール=中野貴司】債務超過に陥っているマレーシア格安航空会社(LCC)大手のキャピタルA(旧エアアジア・グループ)は、グループ内の航空事業を統合する方針を明らかにした。中長距離専門のエアアジアXが、マレーシア国内中心のエアアジアなどを買収する。
キャピタルA、エアアジアXの両社は、上場するマレーシア証券取引所から経営難に陥った企業を対象とする「PN17」銘柄に指定されている。事業再編による経営効率化で上場廃止を回避する。
両社が29日に発表した再編構想によると、エアアジアXがキャピタルA傘下にあるマレーシア、タイ、インドネシア、フィリピンの航空事業をそれぞれ買収し、グループの航空事業を統合する。
エアアジアXのベンヤミン・イスマイル最高経営責任者(CEO)は声明で「短距離部門の買収によって相乗効果が生まれ、収益の回復が早まる」と利点を強調した。キャピタルAは、同社株主には傘下の航空部門売却の対価が支払われるため、株主価値の希薄化は生じないと説明する。
キャピタルAとエアアジアXは2023年1月に、航空事業統合を含む経営再建計画をマレーシア証取に提出する予定。同年7月までの実施を目指す。
両社が航空事業の統合を目指すのは、PN17銘柄の指定解除が急務になっているためだ。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う航空需要の急減で大幅な赤字や債務超過に陥った結果、21年10月以降に相次いでPN17の指定を受けた。
PN17銘柄に指定された上場企業は1年以内に再建計画を提出し、証取から承認を受ける必要がある。承認されなければ株式が売買停止となり、上場廃止の懸念が高まる。両社は再編計画の提出期限を延長するよう取引所に要請すると同時に、再建計画の詰めを急いでいる。
キャピタルAが30日に発表した22年7~9月期決算は最終損益が9億131万リンギ(約280億円)の赤字と、前年同期(8億8700万リンギの赤字)とほぼ同水準だった。旅客需要の回復に伴い、売上高は前年同期比6.6倍の19億リンギまで戻った。
ただ、燃料費の増加や為替差損の計上が売り上げの伸びを帳消しにした。トニー・フェルナンデスCEOは声明で「原油価格の下落やドル高の一服などは今後の業績の追い風になる。景気が減速すれば、格安航空券を求める動きが活発になるので我々にとってはプラスだ」と強気の主張を繰り返した。
一方、エアアジアXが22日に発表した22年7~9月期決算では最終損益が2500万リンギの黒字に転換した。国内外の旅行や出張需要がさらに回復すれば売上高の増加が見込める。航空事業の統合で重複する経費を削り、安定的に黒字を計上できる事業構造をつくりたい考えだ。
同社の年次報告書によると、エアアジアが同社株式の14%弱を保有するほか、キャピタルAのフェルナンデス氏、カマルディン・メラヌン会長が間接保有も含めてそれぞれ3割以上の株式を握る。
エアアジアは東南アジアのLCCの先駆けで、航空業界に大きな変革をもたらした。ただ、コロナ前から業績の停滞が目立っており、キャピタルA、エアアジアXの時価総額は日本円換算で、それぞれ約750億円、約60億円に低迷している。
航空事業のエアアジアXへの売却後、キャピタルAは貨物輸送や、配車や食事宅配を組み合わせた「スーパーアプリ」事業に活路を見いだす。ただ、配車や食事宅配はグラブなどの有力スタートアップがシェア上位を占めており、後発のキャピタルAが利益を上げられるかは不透明だ。

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